ともに監督として俳優として長年映画界で活躍しているベテラン、ジョン・タトゥーロとウディ・アレンがペアを組んだ本作。今回、監督・脚本・主演のジョン・タトゥーロさんに電話インタビューをさせて頂きました。美男というわけではないけれど(笑)、ニューヨークのお金持ちの女性達を虜にしてしまうジゴロを演じた背景について、聞いてみました!
PROFILE
1957年2月28日、アメリカ・ニューヨーク生まれ。イェール・スクール・オブ・ドラマで学んだ後、ジョン・パトリック・シャンリーの『ダニーと紺碧の海』で舞台デビュー、主役ダニーを演じ、オビー賞とシアター・ワールド賞を受賞。映画では1991年コーエン兄弟監督作『バートン・フィンク』でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞。翌年、監督デビュー作となる『マック/約束の大地』でカンヌ国際映画祭のカメラ・ドール賞を受賞した。その他の出演作は『ドゥ・ザ・ライト・シング』『ジャングル・フィーバー』『クイズ・ショウ』『ミラーズ・クロッシング』『ビッグ・リボウスキ』『オー・ブラザー』『トランスフォーマー』シリーズ(1〜3作目)など。監督作は『天井桟敷のみだらな人々』などがある。
2014年7月11日より全国公開
監督・脚本:ジョン・タトゥーロ
出演:ジョン・タトゥーロ/ウディ・アレン/ヴァネッサ・パラディ/シャロン・ストーン/ソフィア・ベルガラ/リーヴ・シュレイバー
配給:ギャガ
ブルックリンの本屋を営むマレーは、潰れそうな店を維持するため男娼ビジネスを思いつき、花屋を営む友人フィオラヴァンテを口説いて、彼をジゴロに仕立て上げる。フィオラヴァンテは美男というわけでもなかったが、意外にも彼のクールでダンディなところがウケて、裕福な女性たちがたちまち彼に夢中になっていく。ところがフィオラヴァンテは、お客の一人である未亡人アヴィガルと恋に落ちてしまう。
公式サイト 映画批評&デート向き映画判定
関連記事:
■TJE Selection イイ男セレクション/ジョン・タトゥーロ
■女子がすすめる大人イイ女特集
©2013 Zuzu Licensing, LLC. All rights reserved
マイソン:
ジゴロが主人公というストーリーで、御自身で演じようと決められた理由と、ジゴロを演じる上で一番難しかった点を教えてください。
ジョン・タトゥーロ:
実はジゴロというキャラクター設定よりも、僕とウディがペアになるということがそもそも企画の始まりで、途中でこのジゴロというコンセプトを思いついて、ウディも「それおもしろいね」と言ってくれてこういう形になり、最初からジゴロは僕が演じるつもりでした。一番難しいと思ったところは、行為、つまり“ジゴロの稼業”をみんなの前でしなければいけないわけではなかったからさ、ハハハハ(笑)!でもそういうシーン(行為そのもののシーンではないにしても)で皆をとにかくリラックスさせることがすごく重要でした。瞬間的にキャラクターのあいだで自然に何かが生まれる余地を作らなければいけなかったんです。最初に人と人が出会ったときのデリケートさを表現するのにすごく気を付けました。
マイソン:
ジゴロを演じる上で、女性から意見を聞いたりしましたか?
ジョン・タトゥーロ:
脚本を書いているときにたくさんの女性たちに読んでもらって、「思ったことをズバッと言ってくれ」と皆に言っていました。だからまさにズバッとくるようなコメントももらいましたが、リサーチの過程では男女問わずそういう商売をしている方と話をしたし、本を読んだり映画を観たりもしました。ときにカラダだけということもあるだろうけど、僕がもっと興味を持ったのは、より親密なやりとりで、自分たち(そういう職業の方達)の行為によって何らかの形で人を助けることができたという話でした。そういう商売をやっていらっしゃる方の多くは「我々はパフォーマーであり、サービスを提供している」という言い方をしていましたが、お客さんの方は何か悲嘆に暮れていたり、寂しかったり、どうにかしたいという思いを持っていて、そういう方に対してある種の癒しを提供しているというのはすごくおもしろいなと思いました。もちろんそういう商売のなかにはもっと冷たい出会いもあるだろうけど、今作ではそういう商売の面を描く余地はなかったし少し寓話的に描いているので、観客の皆さんにストーリーについてきてもらわないといけない部分はありますけどね。
マイソン:
なるほど。男性からするとジゴロという仕事は憧れなんでしょうか?
ジョン・タトゥーロ:
男性がジゴロに憧れるか僕にはわからないけど、男のファンタジーと思っていたわけではないし、たぶん実際のそういう稼業は僕たちが思っているよりもきっときつくて厳しいこともあるでしょうね。僕なりにコメディ色の強い映画にしていますが、ちょっとビター・スイートなテイストになっていて、人と人が親密になることと同時に孤独についても触れているし、友情の映画でもあるんですよね。主人公とウディ・アレンが演じるマレーの二人がお互いに愛し合い、頼りにしている、二人のラブストーリーでもあるのかな。
マイソン:
ユダヤ教にまつわる事柄がストーリーに大きく関わってきましたが、日本人の私からすると、宗教的な話題をコメディ要素に使うのは難しかったのではと思いました。気をつかった点はありますか?
ジョン・タトゥーロ:
日本の方にはこの宗教の部分をメタファー(隠喩)と思って観てもらえれば嬉しいです。別にイスラム教でもキリスト教でも良かったわけで、これらの世界は共通して男性社会で、ルールを作っているのは男性なんです。これはセックスについての映画という側面もあり、そういう作品を描く上で必要なのは障害や壁だったりするわけですが、それが抑圧だったらどうだろうと考えました。世界中、男性のルールのなかで生きなければいけない社会はいっぱいあって、アヴィカル(ヴァネッサ・パラディ)が象徴しているのは、宗教的な生活を送り母という顔を持って生きているなかで、男性に優しくされたことがない、だんだんと心の距離を近づけていくようなつきあい方をしたことがない、「あなたは誰なの?」って聞かれたことがない女性です。なぜかというと、そういう社会はすべてがアレンジされているわけで、結婚もお見合いだったりするから、モノのようにというのは何だけど、女性は与えられるものであったりします。それは今回描いている宗教に限らず、正教系だとどれもそういう側面があるんじゃないかと思います。でもそれを描くのがリスキーかと言えば、それこそ男娼という商売を描くのもリスキーなわけで、ある意味宗教とセックスは切り離せない部分もあると思います。それが悪いと言っているわけではなく、宗教に対してリスペクトを持ちながら描いています。だからアヴィガルというキャラクターは触れられることをとても望んでいる、求めている、それは肉体的な部分だけじゃなくて、エモーショナルな面でも触れて欲しいと思っていると捉えてもらえると良いと思います。
マイソン:
では最後に、女性向けのウェブサイトに掲載しますので、日本の女性に向けて本作の見どころを一言お願いします。
ジョン・タトゥーロ:
最高だね、これは女性のための映画だからね!年齢に関係なく、人は誰もが誰かと一緒にいたい、過ごしたいと思っているんじゃないかな。夜たった二人で過ごす時間に、裸の肩に手を回して欲しい、手を回したい、そういう気持ちってきっといくつになっても変わらないと思います。我々は赤ちゃんのときから年を重ねてもそういう親密な空間というのを求めながら生きていると思うし、ジゴロという部分はメタファーとしてすごく笑える映画でもあるんだけど、シリアスな部分もあるので、そういう部分を楽しんで欲しいと思います。
2014.6.5 取材&TEXT by Myson