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『デイズ・オブ・サンダー』『ビリー・バスゲイト』『遙かなる大地へ』『マイ・ライフ』『冷たい月を抱く女』『バットマン フォーエヴァー』『誘う女』『ある貴婦人の肖像』『妻の恋人、夫の愛人』『ピースメーカー』『プラクティカル・マジック』『アイズ ワイド シャット』『ムーラン・ルージュ』『アザーズ』『バースデイ・ガール』『めぐりあう時間たち』『ドッグヴィル』『コールド マウンテン』『白いカラス』『ステップフォード・ワイフ』『記憶の棘』『ザ・インタープリター』『奥さまは魔女』『毛皮のエロス/ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト』『インベージョン』『ライラの冒険/黄金の羅針盤』『オーストラリア』『NINE』『ラビット・ホール』ほか多数
1967年、アメリカ・ホノルル生まれ。3歳からオーストラリアに在住していたため、アメリカとオーストラリアの二重国籍を持つ。15歳からテレビやミュージック・ビデオに出演するようになり、1988年に出演した『デッド・カーム/旋律の航海』をたまたま目にしたトム・クルーズに招かれてハリウッドに進出。『デイズ・オブ・サンダー』で共演し、1990年に結婚。幸か不幸かトム・クルーズの妻というイメージがあまりに強く、一人の女優として純粋に評価されていなかったのかも知れない。それまでも女優として活躍はしていたが、2001年に離婚した後、女優としての格を上げていく。2001年公開の『ムーラン・ルージュ』はゴールデングローブ賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞し、映画も大ヒット。2003年公開『めぐりあう時間たち』では特殊メイクをして役になりきり、アカデミー主演女優賞、ゴールデングローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)を見事受賞し、実力を証明した。2006年には「最も出演料の高い女優1位」を獲得するまでに。
前夫トム・クルーズとの間の子どもは養子二人だったが、2006年に再婚したカントリー歌手のキース・アーバンとの間には女児ができ、2008年に出産。2010年には代理母出産で女児を授かっている。
ニコール:私はいつも、極限の題材を扱った映画に興味を抱くんです。私が作る、(基本的に)ほとんどの映画のテーマは、さまざまな形で現れる愛です。だから私は人々が愛を渇望するとき、人々が愛を失うときに、その人々に興味を覚えるんです、そして子どもを失うということは、自分が行きつく中でもっとも恐ろしい場所です。そして自分をクリエイティブに向かわせる場所とは、自分が恐れを抱く場所でもあるんです。
ニコール:まず、この作品のテーマを信じていました。それに私は、作るのが難しい作品を支援するのが好きなんです。考えられないような重い悲劇にさらされながら、とても異なるリアクションをするこの夫婦に、本当に心を鷲づかみにされました。ベッカとハウイーの夫婦は、それぞれのやり方で悲しみに暮れながらも、一緒に生活している。それがとても面白いと感じましたし、私自身がベッカを演じてみたいと思いました。ブロードウェイの舞台では、シンシア・ニクソンが鮮やかにベッカに命を吹き込んでいましたが、そこで私はこのキャラクターを映画ファンに紹介することができればという考えに夢中になったのです。
ニコール:主人公の夫婦が自分たちの子どもである4歳の少年を亡くしてから、8ヶ月。そしてそれに向き合いながら、どうやって人は生きていくのだろう? 生きたいという欲求を奪い去ってしまうような、このような大きなショックを受けたとき、どうやって人は生き続けられるのか? そしてそれは結婚に関することであり、家族に関することであり、そして究極的に、生き続けることと希望に関する問題でもあるのです。それが私がこの物語についてとても素晴らしいと思う点で、その繊細さであり、とても鋭い台詞を包括したその手法であり、でも同時に驚くほど皆の痛みが感じられ、まるで地雷原のようなものであるということ。人々は地雷原の中を歩いている、でもその中を通じて、未来の瞬間が、私たちが共にいる理由が、そして人として、痛みを通じて私たちがひとつになる多くの時間が、この物語を通じて照らし出されるのだと考えました。
ニコール:デヴィッドには天性の才能があると思います。映画的なセリフがどのようなものかを本当に分かっていたし、キャラクターたちのこと、彼らが何を体験してきたかを完全に理解していました。彼と仕事をするのは本当に素晴らしい経験でした。(監督選びに関しては)私たちがジョンを監督に「選んだ」と言えるのかどうか…。私が思うに、ジョンは自身でこの作品を見出し、私たちはそんな彼を見つけたのです。そう表現する方がずっとしっくりきます。ジョンは粋な人で、とてもオープンであり、役者にとって非常にオープンな監督と仕事をすることは素晴らしいことなのよ。彼は同時に俳優でもある、だから演技をする上で欠かせないものを理解している。また彼がオープンであるのと同じくらい、それが理にかなったことならば、抑制も持ち合わせていた。というのもこの映画の題材自体がとても円熟した、生々しいものだったから、この映画は登場人物の感情の多くを抑える必要があったの。そして良くないものをコントロールし得る監督が必要だった。ジョンは芝居がかった映画にならないよう、とても抑制を働かせていたました。結局のところ、動機が純粋ならば人は「この話を作りたい」と自然に集まってきますから。そこで知り合った者同士で企画を一緒に進める。それだけの話です。
ニコール:アーロン・エッカートは、常に夫ハウイーを演じる候補でした。というより、私たちにとって彼が一番の選択肢でした。彼が脚本を読んで、そして脚本を気に入ったと聞いて、私たちは「やった!もしかするとアーロンはイエスと言うかもしれない」と思い、そして私が彼に電話をしたのです。かけるまでは、私は電話で話すのが得意ではなく、実は人間的にとてもシャイなので、誰かに何かを売れるような人物ではなくて…。だから私は「彼に電話をするのは得策だろうか?」と考えてしまったほどでした。でも彼には今までも何度か会っていたし、彼をとても高く評価していること、そして私が相手役を演じるのに、またスクリーンですてきな夫を演じるのに素晴らしい男性だと感じていることを、ただ彼に伝えたくて電話をしたの。そんな経緯があってのち、アーロンは「イエス」と言ってくれました(笑)。
ニコール:アーロンはこの映画に持っているもの全てを注いでいました。ユーモアと知性によって、素晴らしい夫ハウイーのキャラクターを作り上げたのね。彼が加わって、作品が輝いたと思います。本当に素晴らしくて、彼がたどるプロセス、あらゆる手段を試みる様子を見るのは最高でした。それに彼は俳優としてはとてもオープンで、一緒に仕事をするには理想の人よ。
ニコール:ダイアンとは以前仕事をしたことがありました。彼女はこの世界で素晴らしい女優のひ一人です。ダイアンの素晴らしい点は、映画の中で、彼女が恐らく最高級のスピーチ(言葉のもつ力)を獲得していることだと思います。深い悲しみ、喪失感とともにどうやって生きていくかについての独白、「どうやって?実際にどうやってそんなことができる?」それが私が演じたベッカが母親に尋ねる場面なんです。今より良くなることなどあるのだろうかと。私はダイアンがそれに答えるのを描くことができました。
ニコール:彼こそはまさに才能の発見でした。マイルズの素敵な特徴のひとつは、顔が赤くなることなの。スクリーンで見て分かるのよ。素晴らしい!俳優が顔色を変えられるというのは名演技の要素です。そういう奇跡的なシーンができると感情がとてもリアルになるんです。
ニコール:どの衣装にも、どの服の部分にも観ている人の関心が向かないよう、登場人物たちに服を着せなければならないの、最終的にすべてが目を引かないものになるようにしなければなりませんでした。これはとても難しいことだったと思います。それに私のような人間に、彼女はいつも「あなたは178センチね、そしてあなたを郊外居住者のように見せなくちゃならないのね」と言うんです。それで私が彼女に「でも私はそう見えるわ、そう見える!」と言うと、彼女は「いいえ、見えないわ」と(笑)。そんな風にして役の衣装を作っていきました。
ニコール:ベッカの禁欲主義的なところに身を置くことにしました。ベッカはひどい苦痛の中にいて、もし触れればすべてが壊れてしまうかのようです。そう思いながらずっと演じていました。子供を失くした女性なら誰でもそういう感情をもつと思います。息子を失ったことですっかり弱って駄目になってしまった中で、毎朝目を覚まさなければならない。ベッカにとって唯一できるのは、ただ前に向かって進み続けること。彼女は必死になって人生を選ぼうとしている。だから絵画を取り外したり、家を片付けたりしながらこう言うの「ただ悲しみに押しつぶされて死ぬなんて、私にはできない。なら、どうやって生きていけばいい?その方法を見つけなきゃ」ってね。
ニコール:自分の内面の奥深くにある、触ってほしくないような恐ろしい場所に触れてしまったわ。精神的には決してたどり着きたくなかったけど、なぜかたどり着いてしまった。これが私の役作りなんだと思います。そこに行き着くまでは大変だけれど、一旦そこに行ってしまうと、完全にそのキャラクターを吸収してしまうの。それに私はベッカとその家族に対してはとても深い思いがあります。
ニコール:人生の中でどんなにひどい苦痛に見舞われてもユーモアを失わない。それこそが人間の魅力だと思います。それがまた、このような物語を分かりやすくしているんだと思うんです。だって、もし誰かが苦しんでいたとしても、その人を笑わすことができれば、多少なりとも心を開かせることができるわけだから…。ユーモアはいつだって存在するの。たとえ、それがダークな形をとっていたとしても…。
ニコール:この映画の登場人物に対して、私たちは心を開くことができると思います。それは彼らが皆、正直で本物だからです。家族とはそういうものだし、映画を観た人たちは登場人物たちと一緒に彼らの体験を分かち合えると思っています。
2011年11月5日全国公開
監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
出演:ニコール・キッドマン/アーロン・エッカート/ダイアン・ウィースト/サンドラ・オー
配給:ロングライド
愛する息子を4歳にして交通事故で亡くしたベッカとハウイー夫婦。ベッカは息子の思い出に囲まれた生活が辛いと考え、息子の持ち物などを処分していくが、一方ハウイーは息子がいた感覚をいつまでもとどめておきたいと考えていた。それぞれに再生しようともがくも、全く逆の考え方から2人の仲もぎくしゃくするばかり。ベッカはこっそり、道路に急に飛び出した息子を車で轢いた少年に会い、正直な気持ちを打ち明けることで、現実と向き合おうとし、ハウイーはベッカが嫌がって行かなくなったグループセラピーに通い続けるが…。
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2011.10.29