映画のお仕事は、監督・女優以外にも数え切れないほどの種類があります。プロデューサー、照明、音響、衣装、メイク、宣伝、劇場営業…。映画を作る現場から、映画をユーザーに届けるところまで、さまざまな現場で働く女性にお会いする機会があれば、お話を聞いて、現場の状況などを掲載できればと思います。
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安政七年(1860年)に井伊直弼が殺された桜田門外ノ変。この事件に関わった二人の男がその後長きにわたり苦しみながらも武士道を貫き生きていく様を描いた本作。今回は、そんな苦悩の人生を送る男の一人、直吉を影で見守る女性を演じた真飛聖さんにインタビュー。宝塚歌劇団ではトップスターとして男役で活躍していた真飛さんは、男性を立てる時代の女性をどんな思いで演じられたのでしょうか?宝塚歌劇団時代のお話も交えて聞いてみました。
出演作
『謝罪の王様』『相棒—劇場版V—巨大密室!特命係 絶海の孤島へ』など。
PROFILE
1976年生まれ、神奈川県出身。1995年に宝塚歌劇団で初舞台を踏み、2007年より花組トップスターに就任、2011年に卒業した。その後、2012年『37歳で医者になった僕〜研修医純情物語〜』(CX)でテレビドラマデビュー。同年、NHK BSドラマ『恋愛検定』にも出演。2012年より大ヒットドラマシリーズ『相棒season11』の新レギュラーになったほか、2014年5月にWOWOW連続ドラマW『トウソク』にて司法記者役を演じた。
マイソン:
本作の舞台は、男性の生き方に女性が合わせるというのが当たり前のような時代です。でも現代はどちらかというとウーマンリブを訴えかけるストーリーの映画が多いと思うんですが、今と比べて、昔の方が良いと思う部分と今の方が良いという部分はどんなところにありますか?
真飛聖さん:
今は男女が話し合い、ある意味同等の目線でいられるのはとても良いと思います。一方でこの作品の時代のような、女性が三歩下がって黙って頷くとか、男性についていくというのも、すごくステキな関係性だと思います。ですから、どっちの時代の良さもありますね。今の時代の女性も強いと言われていますが、昔は男性が「明日、戦に行く」と言えば、女性は「はい」と言う心づもりをしておかなければいけない状況で、当時の女性は今の女性よりも芯は強かったんじゃないでしょうか。女性の強さがあっての男性の強さというか、でもそれが前に出てなくて女性は下から支えている。お互いに持ってる芯の強さの出方が違うからこそ、惹かれ合い結ばれたりするのかなと思いました。
マイソン:
そうかも知れないですね。これまで宝塚歌劇で活躍され男役も演じてこられましたが、男性役をやる際、女性役をやる際で、役作りをする上で異なること、共通することがあれば、それぞれ教えて下さい。
真飛聖さん:
お芝居は心と心で会話をすることに変わりはないのですが、ここは女性だったらすごく切なくて泣きたいシーンだけど男性なら泣かないかなとか、逆転の発想をしなければいけませんでした。そういった意味では、最初、男性を演じる上で台本を読むのは難しかったんです。でも慣れてきて、それを20年近くやると、今度は宝塚を卒業して女性として役者をやるときに、男性の気持ちで台本を読んでしまいそうになって、倍の時間がかかります(笑)。自分のなかでここはもっと女っぽくしなきゃいけないんじゃないかと、勝手に“女性とは”というのを考え過ぎてしまうんです。今回でいうと所作は男性と女性ですごく違いますが、歩き方一つにしても、ちょっと膝を曲げて…とか、細かい初歩的な動きの方が、心情よりも苦労しましたね。
マイソン:
真飛さんご自身がトップスターとして宝塚の看板を背負っていたという点で、少し武士道に通じる部分があったのではと思いますが、どうでしょうか?
真飛聖さん:
あるかも知れないですね。一組に83人いて、そのトップにいる私が何かに揺らいでしまうと、他の82人が迷ってしまうんですよね。自分の心に嘘がなく、不安がないようにしていないといけないので、「大丈夫なんだ、できるんだ」って自分に言い聞かせていました。ある意味、暗示ですね。自分はこれで良いんだという良い意味での開き直りじゃないですけど。揺るぎないものを心に持っていないとそこで生きられないというのがあったので、それは武士道に通じるというか、そこに存在する意味が見えないのだと思います。
マイソン:
では、映画好き女子に見どころをお願いします。
真飛聖さん:
私はこの映画が雪のシーンで始まった瞬間に引き込まれて涙が出そうになったんです。この世界にいざなってくれる雪景色から始まるので、その繊細に描かれた情景や日本の情緒、慎ましさを観て欲しいと思います。そして、内に秘めて堪え忍んで生きていく人たちそれぞれに感情移入ができると思うので、何度観ても楽しめる映画です。女性には「こういう武士道を貫く男性ってステキね」とか、「控え目から教わることも多いわね!」っていう反省もしつつ観て頂けたらと思います(笑)。人間として生きていく上で、何でも良いのですが自分が信じられるもの、これだけは譲れないものがある生き方を自分もしたいなとか、命の大切さを思い知らされる映画なので、そういうところはとても見どころだと思います。
2014年9月9日取材
2014年9月20日より全国公開
監督:若松節朗
出演:中井貴一/阿部寛/広末涼子/燗政宏/真飛聖
配給:松竹
公式サイト 映画批評/デート向き映画判定 プレミアム試写会舞台挨拶
安政七年(1860年)、井伊直弼に仕えていた彦根藩士の志村金吾は、雪の降る桜田門外で水戸浪士たちに襲われ、目の前で主君を殺されてしまう。金吾は切腹を許されず、主君を殺した者に仇を討つまで13年ものあいだ相手を追い続けることに。金吾の妻セツは、金吾から自分と別れて里に帰るよう言われるも夫が使命を成し遂げるまで連れ添うと誓う。一方、井伊直弼の暗殺に関わった1人、佐橋十兵衛は直吉と名を変え、ひっそりと暮らしていた。そして13年のときを経て金吾は直吉に会うのだが…。
©2014映画「柘榴坂の仇討」製作委員会