映画のお仕事は、監督・女優以外にも数え切れないほどの種類があります。プロデューサー、照明、音響、衣装、メイク、宣伝、劇場営業…。映画を作る現場から、映画をユーザーに届けるところまで、さまざまな現場で働く女性にお会いする機会があれば、お話を聞いて、現場の状況などを掲載できればと思います。
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マイソン:
アメリカでも映画製作について学び、お仕事もされていたようですが、日本とアメリカでは監督とプロデューサーの立ち位置が違うように思います。それぞれの方法のメリットとデメリットを教えてください。
登山プロデューサー:
日本もアメリカも、監督発信の企画でなければ、プロデューサーが監督を決めます。ハリウッド映画の場合は、監督と意見が合わなければ変えちゃうこともありますが、日本はもうちょっと監督を重視しますよね。
マイソン:
アメリカはより合理的なんですね。
登山プロデューサー:
そうですね。ハリウッドにもメジャー系と単館系がありますが、メジャー映画の場合は監督の個性というよりは、世界の幅広い人に観てもらうことが一番重要視されると思います。
マイソン:
じゃあ、プロデューサーさんは、シーンのどこをカットする、しないなど、割と口を出すんでしょうか?
登山プロデューサー:
特に編集はハリウッドで問題になります。最終的なファイナル・カット権はプロデューサーにあるので、たまに別のバージョンとしてディレクターズ・カットというのが出てきますよね。あとハリウッドのスタジオは、一般の方に結末のパターンを見せてどっちが良いかアンケートを採ったりします。
マイソン:
では邦画のデメリットはありますか?
登山プロデューサー:
邦画はほぼ日本でしか市場がなく、日本で成功しないと商業として成立しないので、あまりに監督寄りになって観客をないがしろにしていたらダメではないかなと思います。自主映画なら良いと思うんですが、出資をしてもらうのなら、制作費を下げるなどして、出資してもらった分は回収できるようバランスをとらないといけないと思います。
マイソン:
最後に、本作のプロデュースで一番やり甲斐を感じたところは何ですか?
登山プロデューサー:
最初は小説の内容そのままを映画化されようとしていたんですが、240ページを映画化すると240分なので4時間の作品になってしまうんですね。制作費やビジネス的な視点から、上映時間を短くするために、1969年から1971年の響子の成長物語だけにしたらどうかと提案して、矢崎監督も良いアドバイスだとおっしゃってくださいました。原作者の小池真理子さんも快くオーケーしてくださって、クライマックスのシーンについても原作には1行しかない文を膨らませて欲しいとアイデアを出したんですが、素晴らしいシーンになったので、貢献できたと思います。あと、最初はなかなか配給会社も決まらない状況でしたが、祐之介役も決めてから出資を募ったほうが良いという話をして、斎藤工さんにオファーをしてすぐオーケーしてくださって、池松君もオーケーしてくださって、最終的には97%の出資を私が集めたんですが、矢崎監督は「登山さんが入ってから急に企画が動き出した」と言ってくださり、矢崎さんがプロデューサーとしてリスペクトしてくださると周りの方もリスペクトしてくださるので、自分の母と変わらない世代の方々と良いコラボレーションができてやり甲斐がありました。
2016年3月2日取材&TEXT by Myson
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2016年3月26日より全国公開
監督:矢崎仁司
出演:成海璃子/池松壮亮/斎藤工/遠藤新菜/藤田朋子/光石研
配給:アークエンタテインメント
日本で学生運動が盛んだった1969年(昭和44年)。仙台の進学校に通っていた女子高生の響子、レイコ、ジュリーは時代の波に乗り、制服廃止闘争を行っていた。そんななか、ある日バロック音楽が流れる喫茶店「無伴奏」へ行き、渉、祐之介、エマと出会う。響子の両親は仕事の都合で東京に引っ越すが、響子は仙台の叔母のもとに預けられ、厳しい親の監視から逃れた響子は、徐々に渉との関係を深めていくが…。
©2015「無伴奏」製作委員会