映画のお仕事は、監督・女優以外にも数え切れないほどの種類があります。プロデューサー、照明、音響、衣装、メイク、宣伝、劇場営業…。映画を作る現場から、映画をユーザーに届けるところまで、さまざまな現場で働く女性にお会いする機会があれば、お話を聞いて、現場の状況などを掲載できればと思います。
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『ヘヴンズ ストーリー』『64 −ロクヨン−』の瀬々敬久監督が、長年構想を温め、ようやく映画化した本作。今回は、多くの候補者の中からヒロインに選ばれた木竜麻生(きりゅうまい)さんにインタビュー。女力士の役作りのための稽古や、生きづらい時代の女性の生き方について、お話を聞きました。
<PROFILE>
1994年、新潟県出身。中学2年生の時に原宿でスカウトされ、2010年にデンソーの企業CMでデビュー。大学進学で上京してから、本格的に活動をスタート。“ドラえもん ふわチョコモナカ”など多数のCMに出演し、CM美女として注目を集めた。映画では、『まほろ駅前狂騒曲』(2014/大森立嗣監督)などに出演。2017年にはドラマ『デリバリーお姉さんNEO』で主演を果たした。今後は、2018年11月公開予定の野尻克己初監督作『鈴木家の嘘』でヒロイン鈴木富美を演じている。また藤井保氏が撮影した自身初の写真集「Mai」(リトルモア刊)が発売中。
マイソン:
今回300人の応募者からヒロインに選ばれたとのことで、オーディション前の心境と決まった後の心境はどうでしたか?
木竜麻生さん:
今までで、このオーディションが一番緊張しました。本当に耳元で心臓の音が聞こえるくらいでした。たぶん4次審査くらいまでやらせていただいたんですけど、とにかく一生懸命やりました。最初は花菊だけではなくて、女力士の役を全部受けて、途中からどの役の候補なのか絞られていきました。決まるまでに時間が長くかかったので、決まった時はとにかく嬉しくて。2次、3次と進むほど、「ここまできたらやりたい」「どうしてもやりたい」と思ったし、同時にすごく頑張らなきゃいけないって思いました。
マイソン:
監督が長年作りたいと思われていて、今に至った作品だそうですが、そういう熱意がすごく伝わってきた瞬間とか、言葉はありましたか?
木竜麻生さん:
それはもうオーディションの最中も、監督はすごくじっくり時間をかけて見ていらしたので、そういう思いはもちろん感じていました。現場でも大事なシーンは必ずちゃんと粘ってくださって、後半のシーンでは「このままじゃ主役とられるぞ!もっと頑張れ」って、すごく花菊を応援してくださいました。監督は常に一番情熱があって、一番熱量を持って現場にいてくださったと感じています。
マイソン:
今回、日本大学の相撲部で稽古されたんですよね?相撲を観る立場から、実際やってみて何か発見はありましたか?
木竜麻生さん:
発見はすごくたくさんありました。まず、こんなにも普段使わない全身の筋肉を使うスポーツなんだと知りました。1回の取組にかける力がすごく強いし、稽古でも、摺り足、四股、ぶつかりと、いっぱい教えていただいて稽古しました。肉体的にすごく鍛えられるスポーツですし、観ていただけの時より、実際に相撲を体験した後のほうが、ずっとかっこいいスポーツだと思うようになりました。だから、電車とかで、お相撲さんが乗ってらっしゃると、無条件にかっこいいと思ってしまいます(笑)!
マイソン:
ハハハハハ(笑)。テレビでやってる試合を観ていても、視点が変わったなと感じますか?
木竜麻生さん:
何の技かわかったりすると「すごい!今のを一瞬でやるんだ!」とか、ぶつかり合う瞬間を観ても本当にすごいって思いますね。
マイソン:
役作りに向けて、食事はいつもより量を増やしたりしたんですか?
木竜麻生さん:
私は最初から相撲をやっている役ではなく、途中からその世界に飛び込んでいく役だったので、身体をすごく大きくしようというのはなかったんですけど、筋肉になるものとか、スタミナになりそうなものを選んで食べるようにしていました。あとは、相撲指導の方に麦を食べると良いって言われてましたね。
マイソン:
そうなんですね!最近、土俵に女性が上がって人命救助したニュースがあり、話題になったので、本作はある意味タイムリーだなと思いました。
木竜麻生さん:
そうですね。女相撲ってものに皆さんピンとこないと思いますし、ましてや大正時代とか自分達が生まれるよりずっと前からあるってことはあまり知られていないと思うので、例えばニュースを見て、なんとなく気になった方は興味本位でも良いので、この映画を観ていただきたいと思います。当時も土俵に女性が立つとお天道様が怒って雨が降るから、干ばつの時期に女相撲を呼ぶみたいなこともあったそうです。その時代から女性が土俵に上がることに対して、何かしら意味があったとは思います。私も自分でもやってみて、「女相撲ってかっこいい」と思ったので、本作を観て頂いた方にもそう思ってもらえると嬉しいです。
マイソン:
舞台となっている時代が、今よりすごく女性が生きづらい時代だったと思うんですけど、私はこの現代に生まれて良かったなと改めて思ってしまいました(笑)。あの時代の女性を演じてみて、何か思うところはありましたか?
木竜麻生さん:
もちろん女性に対して男性が持つ「こうであるべき」みたいな形が、たぶん今よりもずっと強くて、生きづらい時代だったと思います。でも、今は情報が溢れていて、自分で調べれば何でも知ることができる反面、それが本当かどうかとかもあやふやな部分もあると思うんです。だから逆に物語の舞台になっていた時代のほうが、もっとシンプルで、知らない世界だけど、花菊も女相撲を一目見て「かっこいい」と思って、飛び込んで行ったのかなと。そういうすごくシンプルな気持ちだけで行動を起こして、花菊がすごく勇気を出してやったことだと思うんですけど、その純粋な姿勢が、私は素敵だなと思いました。
マイソン:
深い!私なんて、本作を観ていて「ああ〜、つらい!つらい!」としか思わずでした(笑)。確かにシンプルですね!最後に、うちのトーキョー女子映画部の読者に向けて、女子目線で見どころを教えていただけますでしょうか。
木竜麻生さん:
女性が、精神面で強いということを描いた映画は、ここ最近でもあると思うんですけど、この作品のように、肉体的にも強い女性が描かれている映画って、あまり最近はないんじゃないかなと思います。生きる時代は違っても、女性が懸命に戦っている姿がすごくかっこいいと思ってもらえると思うので、ぜひ私と同じ年代の方も、上の方も少し下の方も、観ていただきたいなと思います。
2018年5月10日取材&TEXT by Myson
2018年7月7日より全国順次公開/R-15+
監督:瀬々敬久
出演:木竜麻生/東出昌大/寛 一 郎/韓英恵/渋川清彦/山中崇/井浦新/大西信満/嘉門洋子/大西礼芳/山田真歩/嶋田久作/菅田俊/宇野祥平/嶺豪一/篠原篤/川瀬陽太/永瀬正敏(ナレーション)
配給:トランスフォーマー
大正末期、関東大震災直後の日本。軍部が権力を強め、人々は貧しい生活を送っていた。そんな時代に生きる花菊は、貧しい農家の嫁であったが、夫の暴力に耐えかねて家出。ふいに見かけた女相撲に加わり、「強くなりたい。自分の力で生きてみたい」という思いを胸に、厳しい稽古を重ねていくが…。
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■TJE Selection イイ男セレクション/永瀬正敏(本作ではナレーションを担当)