何も考えずにただ時間が過ぎていくのに身を任せていたり、何か絶望を味わって悲嘆にくれる毎日を送っていたり、自分が“生きている”かどうかなんてあまり考えません。でも、突然“死”に直面したら、同時に“生”も意識せざるをえません。今回は、“死”によって“生”に目覚めた主人公たちのお話をご紹介します。
ツイートゼロ・グラビティ
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<“生”を実感するポイント> |
宇宙船からも離れ、無重力空間のなかに放たれた状態で、地球に無事帰られるとは到底思えません。サンドラ・ブロックが演じる主人公ライアン・ストーン博士は、宇宙に来る前に辛い経験をしていて、研究に打ち込むしかない状況だということが段々とわかってくるのですが、生きる意味を失っていた彼女が「もうこのまま死ぬしかない」という状況になって初めて、「生きて地球に帰還しなければ」と“生”に目覚めます。観ている側も絶望感いっぱいにさせられるのですが、鑑賞後は「宇宙のなか孤独な状態でどうしたら良いかわからない状況になっているのに比べたら、地球にいるというだけで安心感がある」なんて感覚になります。 今私はとても恵まれた環境にいて、平和に暮らしていることがいかに幸せなことかと実感させられます。どんな不幸も生きていさえすれば乗り越えられるんじゃないかという気持ちも湧いてきます。生きようとする意志が自分にはあると無理矢理気付かさせられるようなライアンのような状況は体験したくないですが、映画で疑似体験して大事なことに気付けるなら、それに越したことは無いですよね。 |
ダラス・バイヤーズクラブ
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<“生”を実感するポイント> |
ガリガリにやせ細った主人公のロン。自堕落な生活を送っている様子でしたが、HIV感染の宣告を受けて急に「死にたくない」と思い始めます。彼は米国では認可されていない薬を密輸し、法をくぐり抜けるために「ダラス・バイヤーズ・クラブ」を作り、HIV感染者に薬を配り始めます。彼のビジネスはだんだんと成長し、彼も活力を得たように見えますが、やはり“死”は身近に感じているようで、「死なないようにする」ことに必死な彼は楽しんでいるわけではないようです。HIV感染がきっかけで彼は積極的に生活を変えていきますが、別の理由でそうなれば良かったとは誰もが思うこと。でも皮肉なことに自堕落な生活を送り“自分の人生を生きていない”人にとって、こういう悲劇的なことでない限り、生活を大きく変えようなんて気になれないのも否めません。でもそれでは遅いんですよね。そんなことを実感させられる作品です。 |
誰にでも毎日同じように朝が来ます。だから毎日同じようにやり過ごしてしまいがち。でも、明日死ぬかも知れない、今死ぬかも知れないと思ったら、やり残したこと、やりたかったことがたくさん出てくるはず。そして何よりも「死にたくない、生きたい」と思うはず。今回ご紹介した映画は、きっと、あなたの日常に“生”を吹き込んでくれる処方箋となります。“生きていること”“生かされていること”の有り難みを実感できたら、毎日をもう少し大切に過ごせるようになれそうです。
2013.12.9 TEXT by Myson