2016年11月5日より全国公開/PG-12
ファントム・フィルム
公式サイト
大学生の何でもない日常を淡々と描いているだけなのに、なぜ心の奥に響くものがあるんだろうと、今回もリチャード・リンクレイター(『6才のボクが、大人になるまで。』『ビフォア・サンライズ』等)の手腕に感動しました。リンクレイター監督が今回描いたのは、野球部員となる主人公の大学入学前の3日間、舞台となるのは1980年9月、南東テキサス州立大学(STU)。資料によると、リンクレイター監督は「1960年生まれ、アメリカ合衆国テキサス州ヒューストン出身。 野球選手として奨学金を受けて、サム・ヒューストン大学に進学するも、持病が原因で引退。映画監督への道を進む」とあるので、ちょうど監督が野球選手として大学に通っていた頃が投影されている部分もありそうですね。服装や音楽、車や家のインテリアなど、レトロな雰囲気が本作の魅力でもあるのですが、野球部員の大学生にひげ面が多く、大学生に見えないのにはお国柄を感じます。「見た目、おっさんやないか(笑)!」と思える部員が多数いるのですが、ブレイク・ジェナーが演じる主人公ジェイクは、初々しさと素朴さがあり爽やかで、好感が持てるキャラクター。『glee/グリー』で一躍注目を浴びるようになった彼ですが、リチャード・リンクレイター監督作で主演に抜擢され、見事にこの世界に入り込んでいて、これからどんな作品に出ていくのか期待が持てます。 将来が希望に満ちていて可能性もあって、まだ完全に社会的責任を追っているわけでも自立を仕切っているわけでもないけれど、“ほぼ大人”である自由も謳歌できる大学生。でも本作には、そんなお気楽に見える彼らが、近い未来に対して言いようのない不安を抱えているリアルな心情が描かれていて、私も自分の大学当時の心境が急に蘇った感覚になりました。夢や希望はあっても、すぐ近い未来にそれが叶うか叶わないかの現実が突きつけられる年頃。“ガキ”でいられる最後の瞬間が輝いて見えながら、切なさも染みる作品です。リンクレイター監督のセンスが光るセリフにも注目して楽しんでください。 |
キャラクター達のセリフの端々に誰もが一度は感じたことのある心情が込められているので、共感しやすい要素はあります。でも、野球部の大学生のたわいもない日常を描いていて、正直なところ、これと言ってすごい出来事が起こるわけでもなく、わかりやすいメッセージが語られているわけでもないので、抽象的な描写の作品を観慣れない人にとっては、ピンとこないかも知れません。「こういう映画を観るカップルっておしゃれ」程度のノリで良いならデートで観るのもアリですが、ガッツリ映画を理解して語り合いたいと思う人はこういうタイプの映画が好きな人と一緒に観るほうが、鑑賞後の会話は盛り上がると思います。 |
12歳未満の人は鑑賞の際、大人の助言が必要なPG-12作品です。とはいえ、大人と一緒にキッズが今観たところで理解はまだ難しいと思うので、もう少し大きくなってから観てもらえばと思います。これから入学する大学生が主人公なので大学生はもちろん、高校生くらいなら近い将来を想像して感情移入して観られると思います。大人になる時を目前にした大学生達の焦りも描かれていますが、今を存分に謳歌しなきゃという気持ちにもなれるストーリーです。悪さをすることはオススメしませんが、今のうちにはじけるだけはじけるのも悪くないのでは? |
関連記事:
■TJE Selection イイ男セレクション/ブレイク・ジェナー
■TJE Selection イイ男セレクション/グレン・パウエル
© 2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
2016.10.31 TEXT by Myson