2014年6月13日より全国公開
パラマウント ピクチャーズ ジャパン
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今回、ダーレン・アロノフスキー監督が来日し舞台挨拶を行った完成披露試写会でドルビーアトモス対応の劇場で鑑賞しました。世界中の誰もが耳にしたことがあるであろう「ノアの箱舟」伝説を映画化した本作。数々の奇跡が起こるこの物語をダーレン・アロノフスキー監督は、ノアたちに起こる奇跡が本当かどうかは気にせず神話のように捉えているとのことでした。そういうスタンスで作られたと知って観たので余計にすんなりと物語に入っていけた気がしますが、とはいえ奇跡をリアルに映像化するのはとても難しいですよね。もちろんCGを使って表現はしていますが、巨大な3階建ての箱舟に関しては実際に作って撮影したというから驚きです。聖書に従って忠実に造られ、大きさは高さ13m、幅22m、全長133mもあったようです。 その壮大なスケールに圧倒されたのはもちろんですが、私が一番引き込まれたのはやっぱり物語のテーマです。アダムとイヴがこの世に誕生させた3人の息子、そのあと生き残った二人の息子の血筋をそれぞれに受け継ぐ子孫でまず価値観が異なります。神の意志に忠実に従おうとするノア、神は人間を見捨てたとして人間同士で争い血を流そうとも欲のままに人間の意志で生きようとするトバル・カイン。二人のリーダーの考え方は正反対ではあり、一見ノアの方が完全に正しいのかと思いきや、カインの言い分にも否定できない箇所があります。もちろん殺し合いや強欲などについては賛同できませんが、神の意志に忠実にあろうとするがために翻弄され狂気に陥っていくノアの姿を見て彼が本当に正しいのかどうかこちらも考えさせられる場面もありました。1度この世界を破壊して汚れのないモノたちだけで新しい世界を作り直そうという神の計画のなかに“人間”は含まれているのか。大洪水のなか動物たちのつがいを乗せた舟で、ノアたちは自分たち人間を残すのか命を絶つのか、ノアや家族たちの葛藤や、最後の決断に心が打たれます。何度観ても発見がありそうな深い深いテーマ。ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、アンソニー・ホプキンス、エマ・ワトソン、ローガン・ラーマンなど役者の演技もすごく見応えがあり、本作のスケールに負けない演技をみせていました。個人的には特にローガン・ラーマンの演技が印象的で、ピュアで不安定な役を見事に演じていました。ぜひ本作は大きなスクリーン、そしてできればドルビーアトモス対応の劇場で臨場感も含め楽しんでください。 |
このスケールはどんな人が観ても一定の満足感は得られると思うし、人類にまつわるストーリーなので誰にでも興味深く観られるので、デートで観るのも良いと思います。気まずくなるようなラブシーンや、戦闘でも目を背けたくなるような露骨にむごいシーンはありません。宗教色のある映画なので、誘う相手がその点で抵抗がなければ問題はないでしょう。宗教的概念があってもなくても、神と人間について議論してみるとお互いの人生観が少し見えると思います。 |
「ノアの箱舟」伝説について聞いたことがない人は、調べてから観てみるとより興味深く観られると思います。ノアの家族には3人の息子と、旅の途中で出会う少女がおり、キッズやティーンの視点に合うキャラクターがいます。この世界が一旦終わって、新しい世界が造られようとするとき、もし自分がノアの家族だったら…など、いろいろな想像力を膨らませて観てください。ノアの決断をどう思ったか、誰かと感想を述べ合うのも良いと思います。どんな人間として生きていくのが良いか考えるきっかけになる映画です。 |
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2014.5.14 TEXT by Myson