映画『ノア 約束の舟』来日記者会見、ダーレン・アロノフスキー監督
2014年5月14日、本作のダーレン・アロノフスキー監督来日記者会見が行われました。会場は箱舟に見立てたセットに、床一面に海の絵が描かれ、映画の世界観そのままの雰囲気が漂っていました。監督も座席の隣にあった岩と“ノア”の文字に興味津々の様子でした。
MCより「なぜ今のタイミングで“ノアの箱舟伝説”を映画化されたのでしょうか?」と尋ねられると、監督は「“ノアの箱舟伝説”はとても偉大なものです。何千年もの間この伝説は語り継がれてきましたが、メジャーな形で映画になったことはありませんでした。もしかしたらこの伝説自体を知らない国もあるかも知れません。でもそういった国でも水そのものは、人間と切っても切れない関係にあるはずです。水は破壊もしますが、再生の意味もあり、そのバランスを取りながら人間は生きてきたんだと思います。今回この偉大なストーリーを初めて大きな形で映画にするチャンスがあり、とてもワクワクしました」と語りました。続けて「監督は13歳のときにこの“ノアの箱舟”をテーマに詩を書いたとのことですが、30年の時を経て映像化されたということですか?」と聞かれると、「13歳のときに、学校の先生が平和についての詩を書く課題を出したんです。そのときに私は“ノアの箱舟”の詩を書きました。その詩は国連のコンテストに提出されて優勝し、国連で詩を読み上げる機会に恵まれました。それがきっかけとなり、私はストーリーテラーになろうと決めたんです。今回の映画が出来上がったときに、ぜひその13歳のときの先生を見つけたいと思い探したところ、見つけることができたんです。そして実はラッセル・クロウと一緒にこの映画の1シーンに出演してもらっているんですよ」と話しました。13歳の少年の夢が30年の時を経て世界中の人が観る映画を作ったっていうだけでものすごく感動ですね。ちなみにその先生の出演シーンは、ノアが町を歩いているときに出会う片目がつぶれた老女だそうです。ぜひ監督の恩師の姿も確認してみてください!
その後キャストの話題へと移り、まずはラッセル・クロウについては「この作品はいろいろな奇跡が起こるので、皆さんが観たときにその奇跡を信じさせることができる俳優が必要でした。それをもたらしてくれるのがラッセル・クロウだったんです。彼は目の動き一つ、唇を捻っただけで何か感情を伝えるのが上手い俳優で、また『グラディエーター』以降はあまり英雄的なキャラクターはなかったと思ったので、彼にはノアの役がピッタリだと思いました」とコメント。また監督は本作で描きたかった部分について、「聖書のなかには“神は自分が創ったものを全部破壊することは非常に悲しい大きな苦しみだった”ということが書いてあり、神はその悲しみや苦しみがどういうものなのかという正義と慈悲の部分をノアに託したんです。正義というものは、あまりにも厳しくし過ぎるとやり過ぎになってしまうことがあります。また慈悲をかけ過ぎると甘やかすことになるんだと思います。このバランスは非常に難しいと思うんですが、本作ではそのバランスをどうとっていくのかという部分をドラマとして見せたかったんです。結果的には感情豊かなストーリーになったと思っています」と話しました。そしてエマ・ワトソンについては「イラのキャラクターというのは人間の善の部分と、未来に対しての希望を象徴しています。先ほど話した正義と慈悲のバランスが、まさにノアとイラとの対立になっているんです。エマ・ワトソンをみんなは『ハリー・ポッター』シリーズのハーマイオニー役から愛していると思うんです。でも彼女が台本を読みに来たときは、もっともっと大きなものを持っていると感じました。なので今回は、皆さんが少女だと捉えていたイメージを変えて一人の女性としての彼女を見せたかったんです」と語りました。まさに監督の思惑通り、劇中では一人の女性としてのエマ・ワトソンを観ることができます。“脱ハーマイオニー”したエマ・ワトソンの演技は見応え抜群です。
ほかにも監督は役者たちにスケールを体感してもらうために、聖書に忠実に高さ13m、幅22m、全長133m箱舟を6ヶ月かけて作ったということも話していました。映画のなかではその箱舟が大きな存在感を表し、よりキャラクターたちの人間ドラマを際立たせています。ちなみにこの箱舟に使用した材木は全てリサイクルしたそうです。
また前日にはマスコミ向け完成披露試写会の舞台挨拶にも登壇されていましたが、大学時代から日本に興味があり、黒澤明監督や塚本晋也監督に影響を受けていることから「日本でもこの映画が成功することを願っています」と話していました。舞台挨拶のときも、記者会見のときも終始ニコニコしている監督はとっても優しそうで好印象でした。
壮大なスケールで描かれた本作ですが、監督のこだわった人間ドラマについては現代で生きる私たちが考えさせられる部分がたくさんあります。ぜひ大きなスクリーンで本作をご覧ください!
『ノア 約束の舟』
2014年6月13日より全国公開
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
©2014 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
トーキョー女子映画部での紹介記事
辛口?甘口?映画批評&デート向き映画判定
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13歳の少年の思いが30年の時を経て大スクリーンに! はコメントを受け付けていません