紡木たくの原作コミックを映画化した本作。今回は、本作や『僕等がいた』などラブストーリーを多く手掛けてきた三木孝浩監督に単独インタビューをさせて頂きました。ラブストーリーの魅力やロマンチックの源について質問してみましたが、実際の恋愛にも参考になるお話が聞けましたよ。
PROFILE
1974年生まれ、徳島県出身。これまでORANGE RANGE、YUI、いきものがかり、FUNKY MONKEY BABYSなど多くのミュージックビデオや、CM、ショートムービー、ドラマを手掛け、MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2005最優秀ビデオ賞、カンヌ国際広告祭2009メディア部門金賞などの受賞歴を持つ。2010年、長編初監督作『ソラニン』が大ヒット。その後も若者が主人公のラブストーリーを主に手掛けている。 上記他の主な監督作は、2012年『僕等がいた(前篇・後篇)』、2013年『陽だまりの彼女』など。2014年は本作『ホットロード』ほか、『アオハライド』が公開される。
2014年8月16日より全国公開
監督:三木孝浩
出演:能年玲奈/登坂広臣/木村佳乃/小澤征悦ほか
配給:松竹
和希の家には亡きパパの写真がない。ママが昔も今も好きなのは別の男だったからだ。そんなママと暮らしていてもいつも孤独な和希は自分が望まれて生まれてきたわけではないことに心を痛め、学校に馴染めず浮いている転校生の絵里に誘われるまま、夜の湘南で“Nights(ナイツ)”というチームのもとへ。そこで春山洋志という少年に出会い、2人は最初は傷つけ合っていたが、春山が身を置く不良の世界に和希は自分の居場所を求め、戸惑いながらも次第に春山に惹かれ始める。だが“Nights”のリーダーとなった春山は、敵対するチームとの抗争に巻き込まれていく…。
公式サイト 映画批評&デート向き映画判定 製作会見リポート
©2014『ホットロード』製作委員会 ©紡木たく/集英社
マイソン:
今ではあまり見かけない不良チームがいて、携帯がない時代の物語ですが、現代の若者にも共感できるように工夫したところはありますか?
三木監督:
原作を読んでいた人も読んだことがない人も楽しめる物語にしたかったので、設定自体に携帯は出てきませんが、取り立てて年代が出てきたりするものは極力減らして、あと不良チーム自体もディテールをつめていくよりもどこか自分の吐き出し口を求めてさまよう若い子たちっていう少しデフォルメした形にしたので、今の若い人たちに共感してもらえたらと思います。
マイソン:
本作には親子の物語も描かれていて、木村佳乃さんが演じる“ママ”は完全に悪者ではないにしても、娘の和希目線からだと共感しづらいキャラクターにも見えました。演出する上で工夫された点はどこですか?木村さん自身も実生活でママになられましたが…。
三木監督:
おもしろかったのが、木村さんがもともと原作のファンで和希に憧れた時代があったそうで、当時はママというキャラクターの気持ちがわからなくて、「何、このママ。すごく嫌だ」って思っていたそうです。でも今ママの年代になって初めてわかるママ側の気持ちが良いと言ってくださって。母親にちゃんとなりきれていなかったママが和希とちゃんと向かい合うまでの物語で、春山と和希とママというそれぞれが成長する物語にしたいなと思っていました。僕らが観るとどうしても親世代のキャラクターの気持ちに寄り添うと思いますが、当時14歳の和希と同じ世代だった方たちが、それぞれ子どもを持つ世代になった今、当時を振り返って観られる物語にもなっているので、ぜひ親子でも観て欲しいです。たぶんこういうコミュニケーションのすれ違いって時代を問わずあるものだし、それぞれ理想の母親像とか理想の子ども像を描いてしまうけれど、それぞれがお互いを受け入れることで、ちゃんと家族になる、そういう物語にしたいなと思いました。
マイソン:
じゃあやっぱり本作のキーワードはコミュニケーションなんですかね。
三木監督:
そうですね。そこはすごく大きいなと思いましたね。
マイソン:
これまでいろいろなラブストーリーを手がけていらっしゃいますが、監督が思うロマンチックさってどんなところにあると思いますか?
三木監督:
やっぱり相手を思う時間なんだと思うんですよね。自分じゃなくて相手の気持ちを想像する、「相手は自分のことをどう思っているんだろう」とか、「どう過ごしているのかな」って会わない時間に思ったりするのが、すごく愛おしい。どちらかというと、付き合ってからよりも付き合うまでのいろいろと一生懸命に相手のことを考える行為そのものが僕はすごく素敵だと思います。でもそれは恋愛に限らず、ここで描かれた家族の話もそうなんです。たとえ嫌っていたとしても相手のことを考える時間が素敵だと思うので、特にラブストーリーってそういう時間をたくさん描くので、僕はラブストーリーのそういうところが好きです。
マイソン:
それは男女関係ないってことですか?
三木監督:
そうですね。
マイソン:
確かにそうですね。みんな付き合う前の方が盛り上がったりしますもんね(笑)。
三木監督:
アハハハハ!そうなんですよね。
マイソン:
付き合いますって言った瞬間に何かが変わるのか、今おっしゃっていた愛おしいって思う気持ちが安心か何かで消えちゃうのか、どうなんでしょう?
三木監督:
想像がそこで終わってしまう部分もあるんでしょうね。好きかどうかがわからないとか、こうしたら好きになってもらえるかもとか。いろんな思いや想像を巡らせる時間がたぶんそこである程度止まってしまう瞬間があって、その熱が下がるという感じがあるんでしょうね。
マイソン:
たしかにそうですね。では最後に映画好き女子に見どころコメントをお願いします。ユーザーは主人公の世代よりも少し上、原作を読んでいた世代よりも少し下の20、30代が多いのですが、どうでしょうか?
三木監督:
春山は不良ですけど、僕が撮ってきた恋愛もののなかで一番純愛というくらい、本作の主人公はすごく純粋な2人なんですよね。そういう純粋さに触れると何か自分のなかで気持ちがスッと清々しくなる瞬間があると思うので、恋愛をこじらせがちな20〜30代にこそ本作のまっすぐな純愛を観て欲しいです。
2014.6.24 取材&TEXT by Myson