REVIEW
これまでも『パレード』『悪人』『横道世之介』『怒り』などのベストセラーが映画化されてきた作家の吉田修一と、『日日是好日』『タロウのバカ』『MOTHER マザー』『星の子』などさまざまなテーマで話題作を生んできた大森立嗣監督が、『さよなら渓谷』以来、10年ぶりのタッグを組みました。物語の主な登場人物は、100歳の寝たきり老人が不可解な死を遂げたことで疑惑を向けられる人達と、捜査をする刑事達、そして、事件の真相を追う記者です。
サスペンスの要素はありつつ、観てみると、意外な部分でさまざまな物語が同時に展開していきます。何がどう繋がっていくかは観てのお楽しみとして、本作は奇妙でありながら、ある意味生々しい人間同士の繋がりを描いています。それは愛とか憎しみとか単純な言葉では言い表せない繋がりであり、闇とも光とも言い難い繋がりのように感じます。その正体をどう捉えるかは人によって異なるとともに、観るタイミングや心の状態によっても異なるのではないでしょうか。
また、本作では俳優達の演技も見ものです。松本まりかが演じるキャラクターは、艶っぽさがあると同時に儚さが印象的です。福士蒼汰は、心の奥に重くて暗いものを秘めつつもエネルギッシュな面も持つ捕らえどころのないキャラクターを見事に演じ、新境地を開いています。また、浅野忠信が演じる関西弁の刑事も、やさぐれた感じがリアルです。他にも演技派俳優が勢揃いしており、見応えが十分です。
明確な答えが用意されているというよりも、観る人それぞれに答えを探すおもしろさがある作品です。本作を観ると、自分にとって今の世の中がどう見えているのか、客観視できるかもしれません。
デート向き映画判定
エロチックなシーンもあり、シリアスなテーマなので、一緒に映画を観ることに慣れているカップル向けかなと思います。一見、何が起こっているのか惑わされる展開もあり、いろいろな解釈ができる点では、鑑賞後に感想を話し合うとおもしろいかもしれません。一方で、映画の世界観に浸るには1人でじっくり観るのも良いと思います。
キッズ&ティーン向き映画判定
大人向けのストーリーで、怖いシーン、重いシーンも出てきます。一見不可解なやり取りは、ある程度大人になってから観るほうが、感情移入しながら観られるのではないでしょうか。一方で、人間の心理を考察するおもしろさがあるので、文学的な映画にハマりだしたティーンの皆さんはトライしてみてください。
『湖の女たち』
2024年5月17日より全国公開
東京テアトル、ヨアケ
公式サイト
© 2024 映画「湖の女たち」製作委員会
TEXT by Myson
本ページには一部アフィリエイト広告のリンクが含まれます。
情報は2024年5月時点のものです。最新の販売状況や配信状況は各社サイトにてご確認ください。
- イイ俳優セレクション/浅野忠信
- イイ俳優セレクション/奥野瑛太
- イイ俳優セレクション/平田満
- イイ俳優セレクション/根岸季衣
- イイ俳優セレクション/福士蒼汰
- イイ俳優セレクション/松本まりか(後日UP)