多摩川沿いに住む人々のコロナ禍の日常をオムニバス形式で描いたHuluオリジナル『息をひそめて』。今回、第3話「君が去って、世界は様変わりした」で主演を務めた、村上虹郎さんを取材させていただきました。ふとした質問から大の動物好きだということが判明したり、とてもチャーミングでユーモアいっぱいのお話をたくさんしていただき、笑いが絶えないインタビューでした。
<PROFILE>
村上虹郎(むらかみ にじろう):宮下心平 役
1997年3月17日、東京都生まれ。2014年、映画『2つ目の窓』で俳優デビュー作ながら主演を務め、第29回高崎映画祭最優秀新人男優賞を受賞した。さらに2017年公開の『武曲 MUKOKU』では第41回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。その他、主な映画出演作に『さようなら』『ディストラクション・ベイビーズ』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』『ハナレイ・ベイ』『銃』『チワワちゃん』『ある船頭の話』『楽園』『ソワレ』などがある。また、ウェス・アンダーソン監督作『犬ヶ島』(2018)では、ヒロシ編集員役で声優を務めた。2021年は『孤狼の血 LEVEL2』『るろうに剣心 最終章 The Beginning』『燃えよ剣』の公開、舞台『大パルコ人④マジロックオペラ「愛が世界を救います(ただし屁が出ます)」』、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』への出演も控えている。
前半は合同インタビュー、後半は独占インタビューです。
結婚するならこれだけは外せないという意外な条件とは
記者A:
心平と村上さんとはかけ離れた人物のように私には映ったんですけども、演じるにあたって意識したことはありますか?
村上虹郎さん:
中川龍太郎監督とは付き合いが長いので、監督は僕のことを結構知っているんです。「僕のこと知ってて、もじっているな〜」と思いました。だから、役と僕は全然遠くなくて、世界を変えただけっていう感じがします。自分で演じていてもそうなんですけど、それがそう映ってなかったのなら、してやったりって感じです(笑)。
記者A:
社会に受け入れられていない心平、でも(村上さんは)受け入れられてるんじゃないかと。
村上虹郎さん:
僕は社会に受け入れられてるって思ったことはほとんどないですね。ずっと社会不適合者でしかないなと、日々思って生きています。こうして皆さんと普通に会話できた時はいけてるかもって思うんですけど、帰ったら「やっぱり違うわ」って、すぐ戻ります(笑)。束の間の感じではありますね。
記者A:
意外です(笑)。
村上虹郎さん:
ほんとですか?家に1人でいると「どこに社会性があるんだろう」って思っちゃいます。会話はこうやってできるんですけど、「あの時の俺はなんだったんだ」ってずっと思ってます。
マイソン:
今回短編だからこそのおもしろさもあると思いました。もともと情報が多く揃っている役をやる時と、想像を膨らませる部分が多い役をやる時でアプローチの仕方は違いますか?
村上虹郎さん:
痛いとか苦しいとか泣くとかって、もちろんそこにどれだけの行間、意味、時間を込められるかっていう意味では変わらないんですけど、大きく感情を出すほうがあまり難しくないなというのが、最初から僕にはあるんです。今の自分が上手いとは全く思わないですけど、僕の初期作を観ると、やっぱり「アーッ!!」とかのほうが自分らしいみたいな(笑)。「おはよう」とか「そういえばさ」とか、そういうほうが一番下手で難しいです。この作品は後者のほうなので、僕の中では難題でした(笑)。特に数年前の僕からすると、もう絶対できなかったことなんです。アプローチの仕方については変えてるつもりは全くないですけど、僕としては今回のような作品のほうが難易度が高いですね。
マイソン:
日常を演じるほうが難しいというか、「自然体って何?」ってところから始まったり?
村上虹郎さん:
それもあると思いますし、描かれているのが普遍ではあるので、普遍を演じるのは難しいと思って。普遍って、つまりマジョリティ的なことで、ということはマジョリティが審査するわけなので、より厳しいなという感覚がありますね(笑)。
マイソン:
確かに(笑)!でも、口喧嘩するシーンで、すごく怒ってるのに半分笑みともとれる興奮ぶりが見えて、すごくリアルだなって思いました。
村上虹郎さん:
ほんとですか?でも、普遍に対するコンプレックスもすごくあるんです。自分の完全な思い違いかもしれないですが、人と話をしたり、ご飯を食べたり、新しい人と現場に行ったりする時に、なんかテンションとツボがずっと違うというか、ほとんど合うことがないんです。それは自分の体感や肌感で、皆と楽しみ方が違うなと感じることがよくあって、皆に対するコンプレックスがすごくあるんですよね(笑)。それは悪い意味ではないんですけど、そこを「リアルだった」と言われると嬉しいですね。
マイソン:
今作は、多摩川沿いに住む人達のお話でしたが、お仕事もコロナも関係ないとしたら、住みたい街とかどんなところに住みたいっていうのはありますか?
村上虹郎さん:
僕は都会がすごく好きなんですけど、動物と暮らしたいんです。生まれは東京で東京にもルーツはあると思っていますが、田舎育ちなので大自然にいた時期が長いんです、特にいわゆる思春期に。その時にヤギや鳥、犬、猫とかと暮らしていたので、動物と暮らすことが当たり前の感覚があるんです。『もののけ姫』じゃないですけど、大きな動物が好きで、極論熊とかと暮らしたいんです。
マイソン&記者A:
え〜!
村上虹郎さん:
SNSを見ていると、動物の映像がたくさんあるじゃないですか。海外の熊と戯れてる男性とかも見ますけど、虎とか猛獣が可愛い瞬間みたいなのがすごく好きなんです。リスザルや猫、鳥とか小動物も好きで可愛いし、全部と暮らしたいんです。でも、東京も都会も大好きだから、両極を求めるには絶対的にお金が必要ですよね。撮影で家を空ける役者という仕事もそういう生活に向いていないので、欲望と仕事が合ってないな、どうしようかなって(笑)。シッターさんに育ててもらうというのもちょっとないな〜、俺と暮らしてないと意味がないじゃんって。
マイソン:
確かに(笑)!
村上虹郎さん:
資産運用とか習おうかなみたいな、そんな簡単じゃないと思うんですけど(笑)。だから言い方は悪いんですけど、僕のなかの結婚は相手も同じように動物を飼い続けるっていう契約だと思ってます。女性との契約じゃなくて、「一緒に動物を育てようっていう契約」。
マイソン:
ハハハハ!
村上虹郎さん:
それじゃなかったら結婚しないか、事実婚くらいでいいかなって。
マイソン:
最重要項目ですね!
村上虹郎さん:
大事ですね。なんでこの話になったんでしたっけ(笑)?
マイソン:
どこに住みたいかという話です(笑)。
村上虹郎さん:
どこに住みたいか、間違ってないですね。
一同:
ハハハハ!
幼い頃に感じていた芸能界との距離感
マイソン:
小さい頃から芸能界が身近にある環境だったと思うんですが、俳優さんのお仕事自体に興味をもったきっかけってありましたか?自然に俳優さんになったという感じですか?
村上虹郎さん:
逆かもしれないですね。学校と親の教育上、メディアを一切禁止されていたので、ドラマとか映画の摂取量が、普通にテレビがある世界で育っている人と比べたら、10分の1くらいしかないんですよ。『ROOKIES(ルーキーズ)』とか隠れて観たりはしてたんですけど、ほとんど知らないので、憧れられなかったんです。漫画とかゲームはしていましたけどね。だからむしろこの世界は遠かったです。両親の身近にいる方々に会う機会はあるんですけど、そういう方達って行ききっちゃっていて、逆に芸能人っぽくない人も多いんです(笑)。そういう意味では、いわゆる僕の同世代とか、両親より下の世代の方達は未だに新鮮ですね。両親が一番忙しい時期に僕が生まれているので、祖母に育てられてるみたいなところがあって、小さいながらも漠然と「なんで、あんたらおらんねん」って思いはありました。そういう意味では漠然といやでした。親父の芝居のスゴさとか、まだ小さい頃は知ったこっちゃないっていうのがありましたけど、いつの間にかわかるようになりました。自分が役者になったからこそわかるようになったんですかね。
マイソン:
こういう聞き方が正しいのかわかりませんが、役者をやってみて楽しいですか?
村上虹郎さん:
他がわからないので、そういう意味ではこれしか知らないから苦しいし、これより楽しいものがあるんじゃないかって思っちゃいますよね。ないものが欲しいので。だから楽しいかどうかはわからないですけど、ギリギリ楽しめてなくはないからまだ続いてるのかなと思います。
マイソン:
海外での俳優業はどうですか?興味はありますか?
村上虹郎さん:
全然なくはないんですけど、僕はネイティブと同じ感覚でスラングを話してっていうのを映画の中で見せるっていうのは無理だと思っています。そういう機会があれば嬉しいですし、ウェス・アンダーソンさんの映画で声優をやったり、ジム・ジャームッシュ監督の『パターソン』における永瀬さんのような役とか、もちろん興味はあります。でも、わざわざ英語に時間を費やすんだったら、生まれ変わったほうが早いなって思っちゃいます。もちろんそういう機会があったら今よりもっと勉強しますけどね。
マイソン:
なるほど。普段観る映画はどうやって選ぶんですか?
村上虹郎さん:
なんですかね、光ってますね。自分が今得たい情報が全部…。って、キラキラっぽい発言になっちゃった(笑)。
マイソン:
いやいやいや、ハハハハ!洋画も邦画もご覧になるんですか?
村上虹郎さん:
全然関係なく、ドラマもドキュメンタリーも含めて観ます。
マイソン:
ジャケ買い的にビジュアルに惹かれて観るとか?
村上虹郎さん:
それでいうと、僕はすごく視覚的なものに作用されるんです。どんなにキャストが良くても、ポスターに惹かれないと後回しになっちゃいます。視覚的なものがとても大事で、視覚的に良いとつられちゃうみたいなところがあります。それは良くも悪くもだなと思うんですけど。俳優を始めてすぐの頃は、自分がそれを観た時に、パッと知識や感覚的に今すぐ必要なものか、今すぐ役立つものかわからないものに対しても当たり前に貪欲に観られていたんですけど、最近それがだんだん減ってきちゃったのは変わったなと思います。それは良くない部分でもあって、保証がないもの、得たものが全くなかったってものに対して、時間を割く余裕があまりない感覚があるんです。一番必要なものを得ていくっていうのは正しいといえば正しいんですけど、自分が自分に対して最近驚かないとか、自分のすべての時間においてあまり驚きがなくなってきたのって、確証がないものに手を出してないからなんだなと思います。今はなかなか飲み会ができませんけど、例えば飲み会で「あそこに行っても8割楽しめないんじゃないかな」って思ったら行かないっていうのがあまりにも増えすぎちゃって、でも残りの2割がすごく大事だったりするじゃないですか。その2割くらいに「めっちゃ楽しかったわ!」って思える可能性があると思うんです。その数%にかけることをもっとしないとなって思います。
マイソン:
本日はありがとうございました!
2021年4月8日取材 PHOTO&TEXT by Myson
Huluオリジナル『息をひそめて』
2021年4月23日(金)よりHuluにて独占配信開始(全8話)
監督・共同脚本:中川龍太郎
第3話「君が去って、世界は様変わりした」
出演:村上虹郎、安達祐実、横田真悠
北九州から上京し、アパートでひとり暮らしをしている心平は、3年間付き合っていた彼女にふられてしまう。それから3ヶ月後、心平はマッチングアプリを利用して、ある女性と出会い…。
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