映画『ボヘミアン・ラプソディ』来日会見:ラミ・マレック、グウィリム・リー、ジョー・マッゼロ
日本での劇場公開目前、2018年11月8日に、クイーンを演じた、フレディ・マーキュリー役のラミ・マレック、ブライアン・メイ役のグウィリム・リー、ジョン・ディーコン役のジョー・マッゼロが来日を果たしました。ロジャー・テイラー役のベン・ハーディも来日予定でしたが、急遽新作の撮影スケジュールの都合で残念ながら欠席となりました。
ラミは、「私達は本当にこの東京に来られて、皆様とこの映画を祝うことができて、とても誇りに思っています。クイーンは日本の方々、日本文化にとても愛されたバンドでしたし、彼らのDNAにそういったものが入り込んでいるんですね。彼らのお家の中にも日本のいろんなモノが入ってきたというだけでなく、音楽にもかなり日本文化が入り込んでいると思います。私がとても気に入った写真の1つに、フレディがステージで着物を着ているものがあります。また映画で使った着物を私もキープしていて、とても大切にしています。クイーンは50回、日本でコンサートをしたと聞いているので、そんな素晴らしい東京、日本でこうやって映画の公開をお祝いできることを非常に嬉しく思っています。ご招待頂いてありがとうございます」と挨拶しました。次にグウィリムは「クイーンは1975年に有名な武道館で公演をしたわけですが、そこで彼らはきっと何者かになると気が付いた。とても重要な瞬間だったと思います。そういったこともあって、私も何年もの間、日本、東京に来ることが夢でした。なので、こういった形でこの映画を皆様と分かち合えるのは本当に光栄で、あまりにも夢が叶い過ぎて、自分の顔をつねっている感じです。本当に皆さん、ありがとうございます!あと、(会見のテーブル上に用意されていたカップを上げて)緑茶が素晴らしく美味しいです」とコメント。緑茶が美味しいぞと聞いて、すかさずラミもお茶を飲んでたのがかわいかったです(笑)。そして、ジョーは「本当に信じられない思いでおります。実は我々はこの作品の撮影初日から、内輪で“もしこの映画が出来上がって、プロモーションツアーで日本に行けたら最高だよね。すごいことだよね”って言って撮影に臨んでいたので、今この場にいることは、夢が叶ったと言える瞬間です。(会見場が屋外だったので、周囲に集まったファンを見て)上までたくさん人がいてくださって、非常に謙虚な思いもあり、素晴らしく感激しています。皆さんほんとに温かく歓迎して頂いてありがとうございます」と話しました。
伝説のバンド、クイーンのどんなところをリスペクトされていますか?
ジョーは「まずクイーンの素晴らしい音楽は、世代もジャンルも文化も超越して、人々から愛されているもので、実際に自分達もクイーンの楽曲をいろいろ聴いて好んでいたわけなんですけど、今回この作品で演じることによって、何倍もその音楽が素晴らしいと思ったし、学ぶこともありました。それはブライアン・メイとロジャー・テイラーに実際にお会いして、彼らが本当に私達を支持してくださり、最大限の応援をしてくださり、私達が彼らを演じるために価値のある人間だと思わせてくださったことです。私達が彼らを演じ、彼らの“遺産”の一部を共有し、私達も彼らの曲をまた学ぶことで、この歌はどういう風に作られていたのか、どういう意味を持っているのかも知ることができました。また全く新しい意味で、クイーンの素晴らしい音楽をこの経験から解釈することができ、新たな有り難みが沸いてきました。この作品の撮影が終わった後も映画ではカバーしていない曲なども聴いたりして、さらにクイーンへの愛が大きくなり、この感謝、愛情はとどまることがないと思います」と話しました。
ラミは「映画の中で“ボヘミアン・ラプソディ”が最初にどうやって出来上がったかご覧になったと思うんですが、最初は評論家からこきおろされたんですね。それを見ても、彼らがいかに時代を先取り、革命的だったかがわかると思います。だからこそ、2018年の今、私達がこうやって映画を作って、それが世界中のボックスオフィスを潤せているんですが、私達の貢献度はすごく少なくて、クイーン自身の素晴らしさだと思います。また新しい世代の人々にもクイーンという素晴らしいバンドを紹介できて、とても光栄です。ベートーヴェンやガリレオなど、時代を先取り過ぎて、その時代には受け入れられなかった、非常に深いモノを発明、発見した人達がいますが、彼らのレガシーは何年も生き続けるんです。クイーンも同じだと思います。あと、フレディを演じ終わった後、演じている時も、すごく自由になった気がしました。ステージに限らず人間として今までちょっと居心地が良くないと思ったことでも、自分らしくできるという気がしました。音楽にそうさせる力があると思います。彼らの音楽は、音楽としてだけでなく、人間としてのステレオタイプを打ち破る力、1つのものに閉じ込めてしまうことを拒絶する力があると思います。そういう意味で彼らは文化的な意味でも先取りしていたと思います。フレディ、そしてクイーンもステージに立って、自分のなりたい者になっている、1番リアルな自分であることをしていたと思います。それを観ている人々にも、自分がなりたい者になる、本当の自分であることの自由を与えていると思います。キャラクターを演じて、音楽を聴くことで、これほど解放感を味わったことはありません」と熱弁しました。
グウィリムは「彼らの音楽は、何にも恥じることなく、すべてのものを祝うエッセンスがあると思います。そこには、批評家が何を言われても気にしない、他のバンドからクールだと思われていなくても気にしない、自分達の才能を信じている、リスクを取ることを恐れないところがあると思います。クイーンというのは1つのものにカテゴライズされることを拒否しているんですね。私はこの役を演じることでこのスピリットを得て、私自身も自信を持ちましたし、自分のなりたい者になって良いんだ、リスクを取って良いんだという自信を得られました。これはジョン・ディーコンが言っていたセリフなんですが、“クイーンは1つのものに縛られない”という言葉がそれを象徴していると思います」と答えました。
実在の人物を演じる難しさは?
グウィリムは「ものすごく責任を感じました。ブライアンや、たくさんのファンを裏切ってはいけないというプレッシャーもあり、それが同時に、今までにないくらい一生懸命頑張ろうというモチベーションになりました。私のみならず、やるべきタスクのリストがたくさんありました。ブライアン並みにギターを弾かなければいけないということを始め、リストがたくさんあったんですが、非常に解放された気持ちになったのは、撮影のかなり初期に、ブライアンとロジャーが来てくれて、完全に祝福してくれました。私達に批判的な目を向けるのではなく、完全にサポートしてくれて、愛情を持って接してくれたので、自分がやって良いんだという自信が持てました」と振り返りました。
ラミは「この役が決まった時、どうやってフレディになれば良いんだろうと思ったんですけど、脚本を開いて22ページ目に来た時に、“フレディがピアノを逆さまに弾く”と書いてあるのを見て、これ以上どうやったら良いんだろうと思っていました。フレディというのは、何千人、何万人もの人も手のひらで扱える人で、私にとっては超人的な人です。じゃあどうやって彼を人間の地位に、どうやって自分ができる人間に、引きずり下ろしたら良いんだろうという風に考えた時に、“フレディは何千人、何万人もの人を自分の手のひらで包み込めるけれど、もしかしたら彼は誰かに自分を手のひらに包んで欲しい人なんじゃないか”ということに気が付きました。そこだったら、自分が繋がることができる、わかるなというところから始めました。そして、彼の人間的なもの、人間の複雑さにもがいているところから、私は自分との共通点を見つけていったんです。自分のアイデンティティを探そうとしてもがいていること、自分は移民だということ、始まりはものすごく地味だったこと、18歳でロンドンに来たということ…。あと彼の親は彼にスターになって欲しかったわけではなく、弁護士とか医師になって欲しかったわけです。私自身の両親もエジプトからアメリカに来た移民です。まさか彼らは私がこうやってバスの前で東京でフレディ役として記者会見をやるとは思わなかったと思うんですけど、それで私が感じたのは何でも可能だということなんです。仕事自体、やらなければいけないことは大変かも知れませんが、できるんだということを感じまして、非常に希望を持たせて頂きました」と、フレディについての深い洞察を明かしてくれました。
ジョーは「過去に実在の人物を演じたことはありますが、これほど有名な方を演じたのは初めてでした。私達はそれは御本人やそのご家族、ファンに皆様に対して、とてつもない責任を感じていました。ここで1つエピソードをご紹介させて頂きます。私がジョン・ディーコンの動きなど、彼のことを研究している時に、“ボヘミアン・ラプソディ”の映像で、彼がダンスをしていたので、その動きを役に取り入れたんですね。その動きの部分が予告編に入っていて、それがかかった時にそれをご覧になった方が、すぐにSNSで「ジョンって、あんな動きしたっけ?」とコメントしたら、瞬時に10人くらいの方が、「モントリオール1981年の公演」という返事が書かれていたんですね。この状況を見て、まさにこのために自分は準備したんだ、こういうことなんだと、ここまで本当に心を配って努力しなければいけないことなんだというところで、その責任の大きさを自分達は感じてましたし、日々演じてるなかで自分達がどういう状況にあっても、大変であっても、最善を尽くさなければと思いました」と振り返りました。
フレディの役作りにおいて、何が1番参考になったか?
ラミは「口ひげを付けたら、それで完全という感じですね(笑)」とジョークを飛ばしつつ、「フレディを演じるには本当に時間が必要だと思いました。数週間ではできないんですね。他の役だったら、数週間で用意することもできるんですが、フレディだったら、私は今回1年くらいかけました。アーカイブにあるもの全部、あらゆるものを観ました。すべてのラジオインタビューを聞いて、すべてのコンサートのフッテージも観ました。日本のものももちろん観ましたし、実は日本の方が撮ってらっしゃったホームビデオも観たんです。彼らが撮っていた、そのバージョンのコンサートも観ました。彼の動きというのは自発的なんです。それはステージのみならず、プライベートな生活でもすごく自然発生的に動く人でしたので、彼から目が離せないという特別さがあります。だから彼を追いかけるのではなく、彼と同じくらい自然発生的に動くようにしたんです。だから振り付け師にはつかないで、ムーブメントのコーチにつきまして、彼の動きを考えていきました。例えば、私は彼の母親の話し方を勉強しました。それによってフレディのアクセントはどこからきたのかを知ろうとしたんです。動きを知るために、彼が小さい時に観て非常にインスパイアされた、ボブ・フォッシー、ライザ・ミネリとか、フレディが影響を受けた人の映画、フッテージもたくさん観ました。そして、皆さんよくご存じの、ポスターにも載っている、この拳を上げているポーズなんですが、あれはどこからきているかというと、彼は小さい時にボクシングをやっていたんですね。そのボクサーの動きが表れているというように、彼が今までやってきたことから、どうやって変化、進化していったかを理解しようとしました。物まねをするのではなく、フレディとしての進化、動きの進化を理解しようとしてたんです。毎日、毎日、勉強して、プロとして私達は非常に勤勉だったと思うんですが、フレディという人間に対して裏切らないようにしよう、彼を讃えようという気持ちで毎日精進していました。今回与えられたこの機会に、自分達なりに立ち上がっていったつもりです。今まで自分達がやった過去のどんなことも越えるほど、願わくばクイーンという素晴らしいバンドに近づくべく努力してました。でも、いろいろな準備を私達がやってもある程度までしか近づけないんです。やはりメイクアップ・アーティストやコスチューム・デザインの方、Live Aidの素晴らしいステージを再現してくださった方々…、私が映画作りですごく好きなのが、本当に才能のある個人が集まって作り上げるところです。今回、素晴らしいバンドのストーリーを、才能が集まって映画にできたことが本当に素晴らしいと思います。またプロデューサーの、グラハム・キング、デニス・オサリヴァンがいなければ、このプロジェクトは発生しませんでしたし、たくさんのスタジオがパスするなか、FOXがイエスと手を挙げてくださったので、今この映画は日の目を見ることができました。日本のFOXの皆さんにもお礼を申し上げたいと思います。そして寒い中、ここにお集まり頂いた皆様にも心からお礼を申し上げたいと思います。そして、(テーブルのカップを手に取り)温かい酒(本当は緑茶)もありがとうございます、乾杯」と締めました。
3人のお話からもこの映画への愛とこだわりがヒシヒシと伝わってきましたが、彼らがここまでキャラクターを研究し尽くしたからこそ、クイーンの物語だけでなく、そのエネルギーも再現できたのだと実感しました。本当に人生を変えてくれるといっても良いくらいの感動がある作品です。ぜひ何度でもご覧ください!
ラッピングバス内には、劇中で使われた衣装が飾られていました!
映画『ボヘミアン・ラプソディ』来日会見:2018年11月8日取材 TEXT by Myson
『ボヘミアン・ラプソディ』
2018年11月9日より全国公開
公式サイト
© 2018 Twentieth Century Fox
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