映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』来日記者会見、アントニオ・サンチェス(ジャズドラマー、本作ではドラマー&作曲家として参加)
ゲスト:菊地凛子/進行役:菊地成孔(音楽家、文筆家)
2015年4月13日、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』の来日記者会見が行われ、ドラムスコアを担当したアントニオ・サンチェスと進行役の菊地成孔が登場。本作は、1カットで撮影されたかのような技法が用いられていることでも話題となっていますが、音楽も登場人物たちの動きや感情を現す大きな役割を担っています。
アントニオ・サンチェスは、本作のオファーを受けたときのことについて「2013年の1月にアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督から電話がかかってきて、“次回作を作るんだけど、サントラはドラムだけでやりたいんだ。やるか?やるよな”と言われ、“イエス”と答えたのが始まりでした」と、監督のなかでもともとコンセプトが決まっていたことを明かしました。そんなアレハンドロ監督については、「アレハンドロは本当に素晴らしくて、クリエイティブな精神の持ち主です。常に僕自身もインプロビゼーション(即興演奏)の作り方をしていますが、監督は他の人にも同じ姿勢を求め、そのなかでどの方からも最高のパフォーマンスを引き出すという才能を持っていると思います。監督としては、要求度が高く非常に厳しいと思われていますが、僕自身は2日で録音をしたのでそんなに大変ではありませんでした。ただ、マイケル・キートンに聞いたら“本当に大変だった”と言っていましたけどね(笑)」と、笑顔で話しました。
主人公のリーガンの心境と音楽の関係性については、「今回のドラムに監督が求めたものは、リーガンという主人公の内なる世界、彼の抱える葛藤、苦悩、痛み、そういったものを表現することでした。リーガンの心はだんだんと退行していくわけですから、彼の感情的な側面を表現することが一番大切なことでした。ですからときにとてもエネルギーがあるし、とても些細なニュアンスを入れたり、繊細な瞬間があったりという演奏にしています」と、演奏が主人公の感情とリンクしていることを話しました。この日は、映画の1シーンに合わせて生演奏も行われたのですが、登場人物の動作や感情にドラムの音が連動していてかなり鳥肌ものでした。
アカデミー賞作品賞を初め数々の賞を受賞した本作に音楽として関わったことについては、「僕は、地球上で最高にラッキーなドラマーだと思います。アカデミー賞を受賞するような映画に音楽担当として参加することができたわけですし、それに自分自身を全く変えることなく、自分が今まで作ってきた音楽そのものをこの映画に生かすことができました。こういう経験はもう二度とないことじゃないかと思います」と語りました。
後半には、本作のアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の『バベル』に出演した菊地凛子がゲストとして登場。菊地凛子はアレハンドロ監督への思いについて「アレハンドロは私にインターナショナルな仕事の場を与えてくれた最初の人物ですし、女優としての強い意志や力を与えてくれた方です。今でも彼が女優を辞めるなって言ってくれたことが、心に残っています」と話しました。また、アントニオ・サンチェスは、『バベル』を観て菊地凛子の大ファンだったそうで、菊地凛子が質問しようとすると、「いや、僕に質問させて」と逆にアントニオからが菊地凛子に「ミュージシャンとしてアントニオとコラボレーションするにはそんなに厳しくなかったのですが、役者として参加すると厳しかったですか?」と質問が。菊地凛子は「アントニオはとても情熱的な人で、彼にだけ見えているゴールがあって、私をそのゴールに連れていくまでは絶対に諦めない方でした。そういう意味では女優としても人としてもタフになりました。インターナショナルな仕事をすることにしても、アレハンドロが諦めないことを教えてくれました」と、回答しました。
今度は菊地凛子からアントニオに対し、「アレハンドロには人を巻き込んでいく力があって、私はそれがすごく心地良かったんですが、アントニオは監督の独特なカリスマ性に巻き込まれましたか?」と質問。するとアントニオは「もちろんです。とにかくエネルギーがあるし、それが伝染して僕も彼のパワーに巻き込まれていきました。アントニオが200%の力でやっているのがわかるからこそ、僕たちも最高の力を出そうって思えるんです。監督によっては、音楽は最後に考えれば良いと思っている方もいますが、彼は映画における音楽の存在が大きいと考えている方でした。僕の作業も一緒にやろうという姿勢でいてくれたし、本当に僕がやりたいことをやらせてくました」と、監督を絶賛しました。数々の素晴らしい賞を受賞している本作ですが、やはり監督の力が大きかったのかも知れませんね。
今回来日を果たし、いろいろなお話を聞かせてくれたアントニオ・サンチェスは、劇中のドラムソロを見事に演奏しています。映画の観始めは、ドラムだけの音楽なんて珍しいと感じましたが、物語が進むに連れて主人公の気持ちとリンクしていることがよくわかり、不思議な感覚になりました。ぜひ本作の音楽にも耳を傾けながらご覧ください!
『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
2015年4月10日より全国公開
http://www.foxmovies-jp.com/birdman/
配給:20世紀フォックス映画
©2014 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved
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監督が本作の音楽に求めたのは、主人公の内なる世界『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』 はコメントを受け付けていません