『LOGAN/ローガン』来日記者会見、ヒュー・ジャックマン、ジェームズ・マンゴールド監督
17年間愛され続けてきたローガン(ウルヴァリン)の物語に幕を閉じる本作をひっさげ、主演のヒュー・ジャックマンと、ジェームズ・マンゴールド監督が来日しました。少し長くなりますが、良いお話がたくさん語られたので、Q&Aのほぼ全てをご紹介します。
笑顔で登壇したヒューは、「コンニチハ。ニホンニコラレテウレシイデス。日本には何度来たかわからないくらい来ています。たぶん世界中で一番訪れている国が日本です。本当に日本が大好きです。ここが本作の最後のツアーの地となりますが、ローガン(ウルヴァリン)を17年演じてきた旅の終わりが東京だということで、皆さんに感謝しています」と挨拶しました。
最初に「これで最後にしようと思った瞬間はいつ、どんな時?」と聞かれたヒューは「『ウルヴァリン:SAMURAI』は日本でも撮影しましたが、その直後に監督と、この映画の話を始めたんです。この映画を作るんだったら、ウルヴァリンの最終章にするのに最もふさわしい良い終わり方だと思ったんです。ただのシリーズの最後というのではなくて、新鮮でより深いものを作りたかった。だから2,3年前くらいから終わりにするのは決めていたんですけど、今の気持ちは平和的というかとても幸せな気分で、皆さんに感謝する気持ちでいっぱいです。完成した作品を観た時はやっと安堵感を覚えまして、監督には世界最高の贈り物を頂いたような、私の思っていた以上のものを頂けて、大変満足しています」と熱く語りました。
17年間ウルヴァリンを演じてきたことは、どんな経験になったか聞かれると、ヒューは「イギリスの演技界で、有名な演出家で(サー=Sir)トレバー・ナンという方がいて、イアン・マッケランさん、パトリック・スチュアートさん、ジュディ・デンチさんなどの演出をされている方なんですが、僕が“Oklahoma!(オクラホマ)”という作品を演じていた時に、彼がこんな事を言いました。舞台をずっとやっている俳優は5つくらい、その人のルーツとなる作品、役を持つものだと。彼は“Oklahoma!”の事を言いたかったんだと思いますが、今の僕にとってはこのローガン1つだけかも知れません。しかしローガンという役は、キャリアにおいてだけでなく人生においても喜びであり、光栄な役でした。“X-MEN”を最初に演じるとき、原作のコミックを読んだ事すらなかったし、聞いたこともなくて、ウルヴァリンという動物(英名がウルヴァリン/和名はクズリ)が実際にいるという事も全く知らなかった。これだけ長く演じる事になったのも驚きですし、今回最後の作品となるので、決定版にしたいと思いました。孫ができた時、「どれを観ればいい?」と聞かれたら、ホコリを被ったDVDを出してきて、「これを観ろ」と言える作品にしたかった。ジェームズ・マンゴールドは、最高の監督であり、脚本家です」と、ローガンという役への思い入れや、監督への称賛の言葉を述べました。また、監督も「これは私とヒューの考えなんですが、どういう映画を作りたいか考えた時、このキャラクターを讃えるものにしたいと思いました。それには、従来の作り方、伝統を壊さなければいけませんでした。彼がこの世の終わりを救うとか、惑星の危機、彼自身を救うなどの設定にはしたくなかったんです。映画は経済的にも体制的にも、1度作られると(シリーズとしては)同じようなものが作られがちですが、今作については、私は頭の中でそういう事を全て解放して、違ったものにしたいという思いで臨みました」と、思いを明かしました。監督やヒューのそんな意図があったとは、続編という枠を超えた本作を観て納得でした。
そして、今回名演を披露している子役ダフネ・キーンの魅力について、監督は「役者さんに求めているのは、思考力なんですね。セリフを話していない状態でも、その人の考えていることを表情で伝える事ができる人。それは私が教える事は不可能なんです。ダフネは彼女のお父さんがiPhoneで撮った動画を見て、それを感じました」と語りました。さらにヒューは「監督がこういうシナリオを書く自体、素晴らしい。最初はチャールズと僕の役だけが書かれていたんですが、ダフネが演じたローラという役は追加で出てきたんです。ローガンにとって20人と戦うのは簡単な事ですが、人を愛する、家族を持つというのは非常に難しい事。この映画は家族や愛について描かれているので、11歳の子が出てくるのは大変良いアイデアだと思いました。でも、どこでローラを演じられる子を見つけてくるんだろうと思っていたんです。僕は48歳でそれをやるのも大変ですが、11歳で実現できる人材を見つけてきたのが奇跡だと思います」と、ローラを演じたダフネを絶賛しました。
続いて、このシリーズでマイノリティーの迫害にフォーカスしている点について、また時代の世相にあったストーリーにする事(今日性)についての質問が出ました。監督は「この作品を作っていた時に、アメリカ大統領選をやっていました。通常、私は自分の素材を準備している際は、周りで起きている事を折り込みます。悲しいことに、今空っぽな映画が多く、今の世相を反映している映画は大胆だと言われますが、世相は反映されるべきだと思います。飴のように口の中に入れたら溶けてしまって、何も残らないような作品を作る事に私は興味がありません。映画を作るために大変な努力をしているので、そんなに早く消えてしまう作品は望んでいません。映画が何かを反映していたり、適切な題材を扱っていたり、何か挑発的なものが良いと思っています。今多くのフランチャイズのシリーズは“どんどん人を眠らせている”と思います」と、監督としての姿勢を表しました。それにヒューが「大統領選のディベートで(メキシコとの国境の)壁の話が初めて出てきた時、私達の脚本のなかには既に壁の事が書かれていました。脚本が書かれた頃、まだ誰もそんな事を言っていなかったし、もっと未来の事だと思っていたので、誰かが(脚本の内容を)リークしたのかと思いました。これはマンゴールド監督が政治的な事も考え、世の中全体を見通している証拠だと思います」と付け加えました。
そして最後に、本作をR指定にして良かったところを聞かれると、監督は「最初からスタジオにR指定でいきたいと伝えていました。大人向けのドラマにしたいと思っていたからです。スタジオに伝えずに製作した場合、万人に楽しんでもらえるように、脚本を書かなくてはいけなくなります。でも最初から言っておくと、子ども向けではないということを理解してもらった上で観てもらえるので、私は自由になれました。暴力シーンや言葉使いだけではなく、私のアイデアを自由に使える事になりました。とにかく今回はR指定にすることは成熟した作品を作るのに必要な事でした。物議を醸さずに受け入れられているのは、この作品がハートに溢れているからだと思います」と、R指定でも勝負できる本作への自信を覗かせました。
アクション超大作としてだけでなく、感動の人間ドラマとして昇華している本作。監督とヒュー・ジャックマンがこれだけの思いで作った成果をぜひご覧ください!
来日記者会見:2017年5月25日取材 TEXT by Myson
『LOGAN/ローガン』R-15+
2017年6月1日より全国公開
20世紀フォックス映画
公式サイト
© 2017Twentieth Century Fox Film Corporation
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