映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』来日記念トークショー、リュック・ベッソン監督、アレクシアン・シラ(劇中歌/監督の姪)
『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』PRのため、監督のリュック・ベッソンが来日し、ファンを招いたイベントに登壇しました。これまでも、『アデル/ファラオと復活の秘薬』(監督・脚本)、『ミシェル・ヴァイヨン』(脚本・製作)など、バンド・デシネ(フランスの漫画)を原作に映画化しているベッソン監督。コミックや他のバンド・デシネから受けた影響について聞かれると、「少年の頃は地方に住んでいて、継父がテレビを置かない主義だったので、周りは牛だらけで、少年にとってはとても厳しい環境だったんです。当時のバンド・デシネ、漫画は自分にとってテレビの代わりで、テレビよりもさらに良いものでした。なぜかというと、時間も宇宙空間も超えられるし、いろいろな種類のエイリアンにも出会える、そういう世界が広がっていたからです。10歳から20歳くらいまで本当にコミックス、バンド・テシネが大好きで、映画を作り始めた頃から、以前ほどは読まなくなりました。当時“ヴァレリアン”の連載がされていた「ピロット」という雑誌は週1回の発行で、“ヴァレリアン”はなんと2ページしか載ってなかったんですね(笑)。次の号が来るまでの6日間、(続きがどうなるのか知るまで)忍耐を学びました。また、どんな展開があるのか自分で考えることができたので、イマジネーションがすごく育ったと思います。だから、僕は10歳の頃から脚本家になることを学んだとも言えます。展開だったり、使われる色彩、すべてを想像していたからです。そして、次の号がやってくると、自分の想像と全然違っていたり、それ以上の素晴らしいものがそこには載っていたんです。ですから毎週2ページしかないという連載のおかげで、僕は脳のトレーニングができたし、想像力を育むことができたと思います。残念であり、興味深いことに、今はワンクリックで子ども達は何百万という情報にすぐにアクセスできるけれど、そのなかでわざわざ観ているのは、スケボーに乗っている犬だったりするわけですよね。だからもしかしたら好奇心が育っていないのかなと思ったりします」と語りました。ぜひ、このお話は世のお母さん方も少し気にとめて欲しいですね。
続いて、シンガーソングライターで、本作の劇中歌を担当しており、ベッソン監督の姪でもあるアレクシアン・シラが登場。「彼女は私の姪です。『アーサーとミニモイの不思議な国』を作っていた時、彼女はまだ13歳でしたが、曲を書きたいと申し出てくれたんです。せっかくのクリエイティビティを止めたくなかったから、“じゃあ、やってみて”と言いました。そして書いてくれた曲がすごくダークで、“アレクシアン、これは子ども向けのアニメなんだけど”って言って、それは採用しませんでした。それから何年も経って、本作で曲を提供したいと言ってくれて、“あまりダークなのはやめてね”と伝えました。そしてこの曲を提供してくれて、プロデューサーであり僕の妻であるヴィルジニーと共に惚れ込みました。僕の姪だからといって採用したわけではなく、素晴らしい曲だから劇中歌になったのだと言わせてください。もちろん、彼女が姪っ子だということは誇りに思っています」と、アレクシアンの才能を叔父視点で優しく語りました。なんだか微笑ましいですね。
そして、アレクシアンがデビュー曲となった本作の劇中歌“A Million on My Soul”を日本初披露しました。歌い終えたアレクシアンは、「さっきのお話では小さい時に作曲をしたのは残念ながら使ってもらえませんでしたが、割と悲しい曲を書く傾向が自分にはあるからなんです。今回はすごくうまくハマったと思います」とコメントしました。
“A Million on My Soul”をはじめ、28世紀を舞台にした本作のオープニングに最新曲ではなく、デヴィッド・ボウイの名曲“スペース・オディティ”を採用するなど、音楽へのこだわりも強く感じさせるベッソン監督は、その理由について聞かれると「本作の脚本執筆中に、車の運転中にたまたま“スペース・オディティ”がかかったんです。僕は頭のなかで映画のシーンが全部見えているので、冒頭のシーンにピッタリだなと思って、採用を決めました。デヴィッド・ボウイとは、『アーサーとミニモイの不思議な国』の悪役のマルタザールの声をお願いしていた縁で、付き合いが長いんですね。今回、曲を採用できて本当に嬉しかったんだけど、残念なことに映画が完成する前に彼は亡くなってしまって。でも、天国の大きな試写室があって、3Dで上映が行われていると聞いたので、『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』を観てもらえたらなと思っています」と語りました。
次に来場したファンからの質問で、続編の予定を聞かれると、「まずは1作目を観て、次を作るべきか意見を聞かせて欲しいな。そして、実は新作の撮影を既に終わったところです。“アンナ(原題)”というタイトルなんですが、全米の公開は10月くらいかな。日本では同じ会社(キノフィルムズ)から配給されます。もちろんプロモーションのためにまた日本に来たいです。日本には何度も来ていて、最初に来たのは『グラン・ブルー』の時。何度もその後日本に来ていますが、皆さん本当にスイートで礼儀正しくて、日本に来るのは大好きです」と答えました。次に『ブレードランナー』でレプリカント(人造人間)役を演じていたルトガー・ハウアーが出演している理由について質問が出ると、「『ブレードランナー』の大ファンなので、ルトガーさんにお願いしたかったんです。『ブレードランナー』ではレプリカントなので、逆に今回は人間役として国連の長官を演じているシーンが冒頭にきたらおもしろいんじゃないかと思ったんです。小さな役ではありますが、彼に参加してもらって光栄でした」と振り返りました。この質問をしたファンが、手に『グラン・ブルー』のレーザーディスクを持参していたのを、ベッソン監督が観て、「これを抱えたまま毎日通勤しているの?妻と寝る時も小脇に抱えてるんですよね?」と優しくいじる場面も(笑)。さらにその流れで『グラン・ブルー』について裏話を披露。「日本人が出てくるシーンを覚えていますか?最初、日本の配給権を持っていた会社が、“日本で公開したいけれども、日本人のところは切ったほうが良いです。日本の方がそれは嫌がるから”と言われました。僕のほうは一つのジョークとして入れただけで、決して日本の人を小馬鹿にしたつもりはありませんが、日本の方に観てもらうため、リスペクトするために、そのシーンをカットしました。6年後に、ロングバージョンをぜひ配給したいと言われました。今度は日本人のシーンをカットすることには、ノーと言いました。だって長いバージョンだから。ロングバージョンを公開したいならば、僕が編集したバージョンをリリースしてくださいと言いました。先方は何週間も考えられて、返事までに時間がかかりました。ロングバージョンの公開のために来日しましたが、日本のジャーナリスト、一般のファンの方から、“(最初のバージョンで)なんであのシーンをカットしたんですか?”と聞かれて、僕のほうは大混乱でした(笑)。その瞬間から、日本の方もユーモアのセンスがあるなと思いました。実はその前は、日本の方があまり感情を出さないので、ユーモアがあまりない人種なのかなと思っていたんです。なので、『グラン・ブルー』はロングバージョンが正解です」と、名作の秘話を語ってくれました。
最後に、SF映画とそうでない映画の違いを聞かれると、「SFには一つの現実を追いかけなくてはいけない、忠実に描かなければいけないという義務がありません。すべてを自分で新しく作ることができるし、作り手にとって本当に楽しい作業なんです」と答えました。過去作品のお話もたくさん聞けて、ファンにはたまらないイベントでした。『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』も期待に応えてくれる作品になっていますので、ぜひ大きなスクリーンで、スケールを楽しんでください。
『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』来日記念トークショー:2018年3月14日取材 TEXT by Myson
『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』
2018年3月30日(金)より全国劇場公開
公式サイト
© 2017 VALERIAN S.A.S. – TF1 FILMS PRODUCTION
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