『キャプテン・フィリップス』トム・ハンクス、ポール・グリーングラス監督
2013年10月18日、本作の主演トム・ハンクスと、ポール・グリーングラス監督が第26回東京国際映画祭開催中に来日し記者会見を行いました。2009年に実際に起こった事件を映画化した本作。全体の75%が海上のシーンで、60日間にわたって撮影されたそうです。それについて監督は「海上での撮影はとても大変でした。救命艇のシーンは多少セットで撮影しましたが、ほとんど海で撮影しました。1日12〜14時間かかり、海のうねりや荒波がある状態での撮影は体力的にも疲労が蓄積する状況でした。ですが映画制作のなかではそのような問題や課題はチャンスだと考えていましたし、実際に海で撮影することによって雰囲気作りなど実際の状況に忠実にできたと思います」と語りました。
そして海賊についてトム・ハンクスは「こういう映画を作る場合、バッド・ガイ(悪者)が出てくるわけですが、本作に出てくるバッド・ガイは背後に複雑な問題を抱えています。機関銃を持った4人のやせ衰えたソマリア人が海賊として出てきますが彼らはただ悪人というわけではなく、腐敗した貧しい国で絶望しています。そういう彼らの背景を理解することによって、世の中が不公平だということが観客の方に伝わるのですが、だからといって彼らがやることを許して良いわけではありません。この世の中で一番危険なのは、生きる目的がない若者に銃を与えることです。社会にも責任はあるけれど、そういうことを許してはいけない、でも彼らは問題を抱えているということがこの作品を観れば伝わるという点で大変意義があると思います」と熱弁しました。監督は「トムに全く同意です。これは犯罪の物語です。優れた犯罪ものは物語が展開していくなかでその犯罪によって生じる結果などがドラマとして描かれていきます。また道徳的に明確である事柄が軸となって、奥行きとして何層にもなる曖昧さや、どうしてそういう犯罪が社会的に生まれてくるのかという関係性が描かれます。良い例でいうとドフトエフスキーの[罪と罰]が浮かびます」と、この作品の見どころを解説してくれました。劇中の船長と海賊たちのセリフのやりとりのなかに、こういった要素を表現する内容が多々ありましたが、複雑な気持ちになりました。とても深い内容が描かれていますので、そういう点にもぜひ注目してください。
最後に監督は「映画をうまく終わらせるのはとても難しいのですが、正しく終えるということも困難です。制作中いくつかパターンを撮って最善のものを考えるんですが、場合によっては全く使えなかったり、1つだけ使えるということもあります。今作についての正しい終わり方を考えると、文字どおりの終わり方ですと奇妙な言い方ですが“完全に不完全“な状態になってしまう、つまり感情的に皆さんが満足して頂けない内容になってしまうと考えました」と深いコメントを残しました。たしかに実話だとはいえ、事実が報道された部分だけで終わりにするとエンターテイメントとしては不完全なのかも知れないですね。社会性とエンターテイメント性をうまく兼ね備えた本作。どんな終わり方をしたのかはぜひ映画を観て確かめてください。
『キャプテン・フィリップス』
2013年11月29日より全国公開
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
http://www.captainphillips.jp/
トーキョー女子映画部での紹介記事
辛口?甘口?映画批評&デート向き映画判定
http://www.tst-movie.jp/hh02_ka/hh02_ka_CaptainPhillips.html
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