映画『ゼロの未来』来日イベント、テリー・ギリアム監督、爆笑問題(太田光、田中裕二)
2015年3月27日、『ゼロの未来』監督のテリー・ギリアムが来日し、3月28日より新たに開業の映画館YEBISU GARDEN CINEMAにてイベントを行いました。5年ぶりに来日したテリー・ギリアム監督は、「ハロー、トウキョウ!また日本に戻ってこられてとても嬉しいです。この後、京都に行く予定です」と挨拶しました。そして、本作の冒頭のシーンは監督が秋葉原を訪れたときの印象が活かされているとのことで、「初めて東京を訪れたときに帝国ホテルに宿泊して、初来日だったので非常に日本的な、東京らしい場所、リアルな東京にどこか行きたいと言ったら、“秋葉原はいかがですか?”と案内されたので、さっそく電車に乗って秋葉原に行きました。ところが、そこで私は人生初のカルチャー・ショックを受けることになりました。いろいろな広告やネオンが煌々と瞬いて、ローマ字や数字など、私が理解できる文字が全くないような大洪水のなかにぽーんと着いてしまったので、いきなりすごく汗をかいてしまったので、慌ててまた電車に乗って、西洋式の帝国ホテルに戻って数時間寝ました。それくらいものすごくショックを受けてしまって、そのときのショックというか経験全てが本作の冒頭に活かされています」と、当時の驚きぶりを大きな身振り手振りで再現しながら語ってくれました。
次に本作のインスピレーションについて「プロデューサーからオファーされたのがきっかけでしたが、脚本を読んだときにとても親近感がある内容だと思いました。たぶんパット・ルーシン(脚本家)は僕の映画を全部観ているんだろうなと感じるような内容で、この脚本をベースに、自分の作品の集大成となるような映画を作ろうと思ったんです。そこを始まりにしていろんなアイデアや遊び心を持ちながら作っていったらどうかと思って、この映画のプロセスがスタートしたんですが、すぐに固まらなかったので、『Dr.パルナサスの鏡』を撮ってから、またこの企画に立ち戻って制作することになったんですが、その期間6年間、実は最初2千万ドルという予算で作ろうとしていたんですが、2012年に制作しようとしたときには実際に850万ドルで制作しなければいけませんでした。ここにも何か時間の流れを感じました。もともとトム・ストッパード(『未来世紀ブラフル』の共同脚本)と、『未来世紀ブラジル』の現代バージョンが作れないかなんて話はしたことがあったんですが、『未来世紀ブラジル』1985年が舞台なんですけど、今の時代を舞台にしてどんな話を作れるかというのは考えていたんです。つまり今、全てが繋がってしまっている、接続している世界のなかで我々は生きているけども、果たしてそこから逃げることができるのか、あるいはそんな世の中で人は独りになることができるのか、あるいはそうなったときに自分自身は誰なのか、そういったことを考えてみるのもおもしろいんじゃないかなと思ったんです。今の時代って、特に若い方はニューロン、神経細胞になっているんですね。何か情報がやってくる、おもしろいことを他の人に伝達してそこで終わってしまう、そんな全てが繋がっている世界から逃げられるのかどうか、そんなことを考えながら、パット・ルーシンが書いた脚本を掘り下げていきました」と話しました。
続いて、爆笑問題が登壇。爆笑問題は、監督が来日するたびに対談をしたり、番組で共演したりしているようですが、監督は「5年前に爆笑問題のお二人に頂いた、僕の初の作務衣を着てきました」とアピール。すると、太田は「このイベントのために監督と同じ格好で3人で揃えてって発注された格好で来たのに、監督がこの格好で来ちゃって何だかよくわかんない」とクレームを言うと、監督は「僕はお二人と同じような格好をしたいわけじゃありません。僕はもうコメディアンじゃない。シリアスな映画作家なんです!」と返しました(笑)。そんなコメントとは裏腹に、爆笑問題が登壇してから、すっかりコメディアンの顔に戻ってしまったテリー・ギリアム監督(監督はイギリスのコメディ・グループ“モンティ・パイソン”のメンバー)。74歳には思えないほど、本当に元気でテンション上がりまくりでした。この後、爆笑問題と“ゼロ”にちなんだゲームをいろいろと行いましたが、太田とまるで子どものようにじゃれあい、ゲームもルールもそっちのけ(笑)。
最後に田中は本作について「監督のすごく得意な近未来の世界観で、デザインも映像も独特で、最初から全てが謎なんですが、観ていくと最終的に人間の本当の深いところの心理がわかってきます。最後、僕は感動しました。監督の優しさがすごく出ている映画だと思いました」と絶賛。続いて太田は「哲学と数学と肉体と精神と、ものすごく難しいところが凝縮されて全部の謎が詰まっている。つまり生きる意味とは何かっていうことをいろいろなアプローチでこの人はず〜っと昔から一貫してそこを映画化されていると思うんですけど、まだ答えは出ていないと思うんです。この作品はテリー・ギリアムにとっては歴史的に非常に重要な映画になるだろうと思いました。ただ一般ウケはしないだろうなと思いました」と太田らしく締めました(笑)。太田も映画作りをしようかとテリー・ギリアム監督からアドバイスを得たことがあるという話に及ぶと、「監督は作り続けているのはすごいと思う。俺のは全部却下されて企画が通らない」と言うと、監督は「あれから5年ですけど、何もしていないの?」と聞くと、「書いても書いても企画が通らない」と太田が答えると、監督はため息をつき「映画ビジネスはワンチャンスしかないんです。もう失敗しているから無理ですね」と言うと、太田は負けずに「(監督も)失敗してるだろ」とツッコミ、監督は「イエス」と答え、会場に爆笑が起こりました。
最後に監督から「観て頂いた方が、この映画を好きでなくても全然かまわないんです。(お金を)払って頂けさえすれば」とジョークを言いながらも「この作品はご覧になって頂いた方々がそれぞれ違う意見をとても感じられる作品になっています。ぜひ友達などと観て頂いて、ディスカッションしてもらえれば、それはとても健康的なことです。そうすればもっと多くの方に観て頂いて収入も増えるのでね(笑)」と締めました。
監督のこの陽気さから、あの世界観を持つ映画が生まれるというのが、これまた興味深いのですが、ぜひどんな作品なのか皆さんの目で確かめてください!
『ゼロの未来』
2015年5月16日より全国公開
配給:ショウゲート
© 2013 ASIA & EUROPE PRODUCTIONS S.A. ALL RIGHTS RESERVED.
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