映画『母と暮せば』クランクアップ記者会見、吉永小百合、二宮和也、黒木華、浅野忠信、山田洋次監督
2015年8月12日、本作のクランクアップ記者会見が行われました。まず山田洋次監督は、本作を作った経緯について「この作品は井上ひさし(2010年没)さんが、 “父と暮せば”(井上ひさし原作、広島が舞台)と、舞台として実現された“木の上の軍隊”(井上ひさしが構想していた未完戯曲、沖縄が舞台)のほかに、実はあと一つ“母と暮せば”という長崎を舞台にした作品も作って3部作にしたかったという話を聞き、僕はそんな井上さんの思いが託された作品をどうにか完成させたいと思いました。設定については、お母さんと死んだ息子が亡霊となって現れるという物語にしようとすぐに思い浮かんだのですが、“父と暮せば”が、亡くなったお父さんと残された娘の話だったので、この2作が対になるようにしたいと思いました。また、今年が戦後70年というタイミングで、僕はこの作品に運命を感じ、今までもたくさんの映画を作ってきましたが、これは僕にとって一番大事な映画になるんじゃないかと感じました」と話しました。『父と暮せば』は、2004年に宮沢りえと原田芳雄が親子役を演じ映画化されており、『木の上の軍隊』も藤原竜也が主演で2013年に舞台化(DVDも発売中)されています。本作公開前にこの2作を先に観ておくと、より感慨深いものがありそうです。
吉永小百合は、今回の作品に参加した感想を「今回が一番監督の情熱を感じました。本当に1カット1カット、心から演出をされていて、私がそれに応えられずに落ち込んだこともありました。でもそんなときは息子役の二宮さんが軽やかに演技をしている姿を見て元気をもらい、助けられながら最後までなんとか演じることができました」と語りました。『小さいおうち』以来の山田監督作品へ出演となる黒木華は、「『小さいおうち』のときとは違って、今回はセリフも多い上に長崎弁だったのですごく苦労しました。私は今25歳で、長崎のことも広島のことも正直授業で勉強したくらいの知識しかなかったので、実際に長崎の戦争経験のある方にお会いしてお話を伺ったり、監督から当時のお話を伺い、そのおかげで町子という役が少しずつ出来上がっていきました」と話しました。
二宮和也は吉永小百合との共演エピソードについて「僕は撮影中、吉永さんから和也さんと呼んで頂いたのですが、いつもちょっとドキドキしていました。今まで周りの方からも和也さんと呼ばれたことがなかったので、吉永さんが初めて名前で呼んでくれた人になりました(笑)。僕の“和也”という字は“かずなり”と読むんですが、よく“かずや”と読まれることがあるんです。だからもう“かずや”でも良いかなと諦めていたのですが、それを吉永さんが“和也(かずなり)さん”と呼んでくれることで周りの人たちに、この人は和也(かずなり)なんだということが伝わったのですごく嬉しかったです。本当に母親のように接して頂いてありがたかったです」と話すと、吉永小百合は「私は最初どう呼んだら良いのかわからなくて、そしたら二宮さんが小百合さんと呼んでくださったので、とても感激しました。それで私もお名前で呼ばせて頂き、二人の距離がグンと縮まったように思います。撮影中は、二宮さんが本当のお母さんといるよりも私といる時間の方が長いと話していたので、撮影が終わってからも二宮さんがテレビで危険なことをやっていたりすると“大丈夫かしら?うちの息子”と、つい心配しながら観てしまいます」とコメントしました。二宮和也と吉永小百合は、会見中も本当に仲が良い親子のようでした。劇中での親子役を観るのが楽しみです。
最後に監督は、本作で伝えたいことについて「今は1945年8月15日のことを記憶している人がどんどん少なくなっています。僕は当時中学1年生で満州にいたのですが、天皇による敗戦の詔勅を運動場で聞いていました。そのときは、満州から日本に帰れるのか、これからの暮らしはどうなるのかなど、いろいろな不安のなかにいたことを今でもよく覚えています。今僕らの世代がやらなくてはいけないことは、そのときの記憶を後の世代に伝えることだと思っています。この映画は母と子の愛情と息子の悲しい恋の物語であるわけですが、この映画を通して観客の方が改めて戦争や平和について考えるようになってもらえたらと思います」と話しました。監督は現在84歳ということですが、話し方や姿勢の良さなどを見ているととても84歳とは思えないほど元気でびっくりしました。やはり今も現役で映画監督として働いているからこそ若さをキープしているのかも知れませんね。
本作は監督の一番大事な作品ということもあり、どんな作品になっているのかますます楽しみです。公開は2015年12月12日です。あともう少し待ちましょう。
『母と暮せば』
2015年12月12日より全国公開
http://hahatokuraseba.jp/
配給:松竹
©2015「母と暮せば」製作委員会
トーキョー女子映画部での紹介記事
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