『ゴースト・イン・ザ・シェル』来日イベント、スカーレット・ヨハンソン、ビートたけし、ピルー・アスベック、ジュリエット・ビノシュ、ルパート・サンダース監督
士郎正宗の漫画「攻殻機動隊」原作による押井守監督作『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』が、ハリウッド映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』となって、2017年4月7日(金)に公開。日本だけでなく世界中のファンが、劇場公開を心待ちにしているなか、キャスト、監督が来日しました。日本からはビートたけしが登壇。最近の日本の芸能スキャンダルを揶揄する挨拶で、記者達から笑いを取ったあと、「初めて本格的なハリウッド映画の、コンピューターを駆使したすごく大きなバジェットの映画に出られて、自分にとってもすごく良い経験だし、役者という仕事をやるときには、もう一度どう振る舞うべきかというのを、スカーレットさんに本当に良く教えて頂きました。さすがにこの方はプロだと日本に帰ってきてつくづく思っています。そのくらい素晴らしい映画ができたと思っています」と後半は真面目にコメント。笑いをとることを忘れないのは、さすが芸人さんですね。
サンダース監督は「素晴らしいレガシーの一部になれることは非常に光栄です。私が美術学校の学生だった頃に、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』に出会ったんですが、本当に素晴らしい作品でした。非常に想像力を掻き立てるもので、実写版を作るんだったら僕が作りたいと思っていました。でも、スピルバーグ監督が作るという事がわかって、その時は諦めたんです。結局幸運にも私が作る事になりました。僕は東京が大好きですし、『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』を生み出した日本は本当に素晴らしいと思います」と、本作への愛を語りました。
この作品に関わったことについてスカーレット・ヨハンソンは、「当初、初めて素材を頂きアニメーションを拝見して、この作品をどう実写化していくのか、自分のなかではっきり見えてなかったんです。ちょっと怖じ気づくというか、ひるみました。でも自分としてはとても興味があって、アニメーションが心のなかに残り、監督が集めた素材や資料を見せて頂いて、彼の考えている世界観が、原作に敬意を持ちながら、独自のものも持っていると感じました。そして、自分が演じる役柄の体験を観て、彼女の人生というか存在について、2人でいろいろ会話をして、自分のなかで否定できないものがあり、この作品が頭から離れないものになりました。未知の世界に一歩踏み出すことになりましたが、監督はいろいろ努力をなさって、これだけ愛されている作品であるというところで、私もとても光栄に思いますし、とても責任も感じます。自分としては本当に素晴らしい経験になりました。感情的にも肉体的にもとても大変な経験でしたが、自分自身人として学ぶ事も多かったですし、役者として本作からいろいろ学べましたので、この役が成長していくような形で自分自身も成長できたので感謝しています。それだけ大きな体験ができた作品だと思います」と熱弁しました。
たけしは、「まずアニメ化された作品を観て、漫画を読みました。実写版は必ずもともとのコミックやアニメと比較されて、ファンから“こんなの違う、違う”と、文句を言われるという定説があるんですが、この作品は(原作に)忠実でありつつ、新しいものが入っていて、もしかすると、アニメ、コミックの実写版で最初に成功した例ではないかと思います。唯一の失敗は、荒巻(ビートたけしが演じる役)じゃないかという噂もあるけど、それは言わないようにって言っております。それくらい見事な作品だと自分は思っているし、現場でも監督がいかにこの作品に懸けているというのがよくわかりました。大きなスクリーンで観て頂ければ、いかに迫力があって、ディテールまでこだわっているかよくわかります」と、本作の出来映えに自信を見せました。
ピルー・アスベックは「やはり日本から生まれた最も素晴らしい物語の1つに参加するのは、怖い思いもありました。僕が演じるバトーは、本当に愛されているキャラクターで、ファンの期待も裏切れない、そんな思いもありましたが、素晴らしいチームに恵まれてそんな不安も吹き飛びました。僕ももともとオリジナルのファンで、出会ったのは、押井守さんのアニメーションが世界公開された時で、僕は14歳でした。アイデンティティーを模索する話で、14歳の僕はまさにその真っ只中だったので、非常に共感することができました。その後、2015年の秋に、この作品のために監督に会ったんですが、いろいろ話を聞きながら、士郎正宗さんの漫画を手に取りました。アニメーションのバトーより僕はちょっと年が下だし、平和主義者だし、ちょっと共通点が見いだせなかったんですが、漫画を読んだらビールもピザも大好きで、コレだ!と思いました。ここからキャラクター作りができましたし、道のりは簡単ではありませんでしたが、ここにいる皆さんとお仕事をできたのは大きな喜びでした」と語りました。
ジュリエット・ビノシュは、「本作の脚本を渡されたときには、まるで暗号書を解読しているかのように、全く理解ができなかったんですね。自分にとっては挑戦し甲斐のある、難しい役柄でした。SFというジャンルも馴染みのない世界でした。ただ息子が映画関係の仕事をしていて、特に3Dの技術関係の仕事をしているんですが、原作のアニメーションの大ファンで、脚本を2回も読んで、いろいろと説明してくれたんです。“これは本当に素晴らしいコンテンツだから、ぜひ出た方が良いよ”と薦められました。ただ、本当に難しい内容で、暗号に近い独自の言語が存在する話で、自分が演じるキャラクターも非常に複雑でした。そういう意味で、別にケンカをしたというのではないですが、監督と熱弁を何度も交わしてから撮影に臨みました。刺激的な現場で素晴らしい仲間に恵まれて、現場に行くとスカーレットが朝からすごく頑張ってトレーニングをしていたり、監督が目の下にクマを作って昼夜通して働きづめで。各国から集まったスタッフも一丸となって、この映画に取り組んでいて、素晴らしく活気溢れる現場でした。私が演じたオウレイ博士はとても多層的なキャラクターで、悪魔のような企業のなかで働きながら、自分が創り上げた少佐に対して、あくまで人間的な部分を保とうと一所懸命頑張るキャラクターで、その事で自分自身の人間性にも向き合うという非常に複雑な役柄です。登場シーンが少ないなかで、自分のキャラクターを観客にしっかり伝えなければいけないという意味でも、とても演じ甲斐がある、難しいキャラクターでもありました。普段滅多に出ないタイプのSF映画の撮影現場で、映画作りの新しい側面にも触れて、とてもエキサイティングな体験でした」と、答えました。
サンダース監督は、「映画というモノは、大きい作品も小さい作品もプレッシャーがあるんですね。この作品のオリジナルのファンは世界中に本当にたくさnいますし、カルト・クラシックとされているものです。ここに登壇されている方々も私から出演を説得しました。ファンもたくさんいるなかで、士郎正宗さん、押井守さんに恥じることのないよう、本当に良いモノを作らなければいけないという大きなプレッシャーがありました。ただ私はそういった大きなプレッシャーのなかで仕事をするのが好きなほうで、疲労困憊し、狂気のなかを彷徨うような事もありましたが、最高のものを作るんだという気持ちで、創造力を全開にして、全てやり尽くすという気持ちでいました。まるで戦争のような状態でここまでこぎ着けたんですが、できるだけ世界中の方々の心に響くような、皆さんが観たことがないようなジャンルで、新しいもの、スカーレット・ヨハンソンさんが出ていてとっても特別なものになっていますので、多くの方々に観て頂きたいと思います」と静かに語りましたが、熱意がひしひしと伝わってきました。
前述のコメントで、自分自身の発見について具体的な内容を聞かれたスカーレットは、「とても個人的な質問だと思うんですが、この5、6年で自分自身が興味を持っていることは、仕事などいろいろな体験のなかで、肉体的、物理的、精神的に、自分が心地良くない、不快に感じる事に、自分を長く留めておいた時に、そこからどういう事をしていけば良いのか、どういう風に感じれば良いのかを探ることです。役者としてそういう事を良い意味で利用していきたいというのがあるんです。深く掘り下げていって、本能的な部分、何が本物か、何が芯の部分かというところで、そこから何かに結びつけられるのではないか、特定のキャラクターを演じる時に使えるのではないかと思っています。本作では、存在という意味で危機に直面しているキャラクターを5ヶ月くらい演じていて、決して心地良い体験ではありませんでしたが、それをどう乗り切っていくのかというのがありました。そういう体験をして、どういう発見ができたのか、何を表すことができたのか、何を築く事ができたのか、とても抽象的な答えになりますが、成長せざるを得ない体験だった作品です。役者として、人間として成長できたと思っています」と、撮影を振り返りました。
最後にサンダース監督は、「アニメーションでできる事が実写ではとても難しい事が多々あるけれど、若い頃にこの作品に繋がりを感じて、あらゆるチャレンジを受けて立つという気持ちで臨みました。カットやペースは日本映画を意識し、本当に偉大な題材なので、観た後にいろいろ考えたり、話したりするような映画にしたいと思いました。技術革新が進む世界のなかで、何が人間たるものかという比喩になっていると思いますし、士郎正宗さんが漫画を発表した当時はまだインターネットや携帯電話が普及していない時代でしたが、今日(こんにち)的なテーマなので、士郎さんがパイオニアであったこの作品をぜひ多くの方に観て頂きたいと思います」と括りました。
キャストやスタッフのこんなに熱い思いが詰まった本作。色眼鏡で観ずに、ぜひ純粋な気持ちで楽しんでください!
来日記者会見:2017年3月16日取材 TEXT by Myson
『ゴースト・イン・ザ・シェル』
2017年4月7日より全国公開
東和ピクチャーズ
公式サイト
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