映画『エル ELLE』来日トークイベント、ポール・ヴァーホーヴェン監督、イザベル・ユペール
「フランス映画祭2017」で上映された本作のトークイベントに、約10年ぶりの来日となるポール・ヴァーホーヴェン監督と、主演のイザベル・ユペールが登壇しました。本作で、ユペールが演じるのは、新鋭ゲーム会社の女社長ミシェル。ある日、自宅で覆面の男に襲われ、事件の真相を探るべく行動を起こしたミシェルが、自らの隠れた欲望や衝動に目覚めていくという、異色のエロティック・サスペンスです。ヴァーホーヴェン監督とユペールという組み合わせでなければ表現し得ない“気品”と“変態性”に満ちた本作は、本年度の映画賞レースで133ノミネート69受賞(2017年7月13日時点)に輝き、フランス映画でありながら米アカデミー賞主演女優賞ノミネートも果たした超話題作。本イベントは観客からの質問にゲストの2人が直接答えるQ&A形式ということもあり、会場となった有楽町朝日ホールは、平日の午後にも関わらず満席となりました。
割れんばかりの拍手に迎えられて登場した2人。「日本は5度目ですが、今回は彼女のおかげで特別な来日となりました」とヴァーホーヴェン監督が挨拶すると、ユペールも「コンニチハ!監督と一緒に来日できたこと、大勢の観客に映画をご覧頂いたことを嬉しく思います」と称え合いました。
「父が連続殺人鬼であることが、ミシェルの本性に影響していると思うか?」という最初の質問にユペールは、「自分自身を滅ぼしてしまう面もあるかも知れませんが、ミシェルはこの出来事を通して自分を再構築するのではないかと思います。劇中では、父が連続殺人鬼ということが、必ずしも彼女の本性にリンクしているのではなく、一つの情報として提供されます。そこは観客の皆さんが自由に解釈していただく部分です。ミシェルはポジティブとは言わないまでも、男性的な暴力はどこからくるのか、自分自身が直面することで知りたいと思っているのかも知れません」と回答しました。
続いてはヴァーホーヴェン監督への質問。「ユペールとミシェルのキャラクターについて話し合いをしたか?」と聞かれた監督は「撮影のプランや、レイプシーンで事故がないように打ち合わせはしましたが、キャラクターの動機については一切ディスカッションしていませんし、するべきではないと思いました。彼女を信用していたので、私は見ているだけでした」と述懐しました。
「幼い頃にミシェルの父親が犯した連続殺人や、ミシェルのレイプ事件のモデルとなった事件はありますか?」という質問には、「ミシェルが10歳のときに経験したことが、その後の彼女にどう影響したのかは小説では描かれていませんし、この映画でもそうです。ミシェルというキャラクターを生み出し、事件を経験した少女が数十年後にどうなるかを筆者は掘り下げて書いていったのだと思います。父親についてはノルウェーで70名ぐらいを殺害した犯人をベースにしています」と述べました。
最後に一番大変だったシーンを聞かれたユペールは「大変だったシーンはありません。むしろ観ているお客さんのほうが大変ですよね(笑)。でも、敢えて挙げるなら小鳥が死ぬシーンです。小さな命をも彼女は救おうとする。この映画のテーマである命の大切さにつながっています」と笑顔で語りました。
残念ながら、イベントはここで時間切れとなり、ヴァーホーヴェン監督とユペールが舞台を去ろうとすると、会場中の観客達が2人に手を振り、終了を惜しんでいました。
衝撃の問題作『エル ELLE』は、2017年8月25日(金)より全国公開です。
トークイベント:2017年6月23日取材 TEXT by min
『エル ELLE』
2017年8月25日より全国公開/PG-12
公式サイト
配給:ギャガ
©2016 Pathé Productions Limited. All Rights Reserved.
↓トーキョー女子映画部での紹介記事
映画批評、デート向き映画判定、キッズ&ティーン向き判定
“気品溢れる変態映画”を作り上げたポール・ヴァーホーヴェン監督とイザベル・ユペールに質問殺到!『エル ELLE』 はコメントを受け付けていません