映画『パーティで女の子に話しかけるには』来日舞台挨拶、ジョン・キャメロン・ミッチェル監督/山本耕史(ゲスト)
本作のプロモーションと、オリジナルキャストで日本初上演となったミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の出演を機に、7年ぶりに来日したジョン・キャメロン・ミッチェルが、とても個性的なカワイイ衣装で登場。ジョンは会場に詰めかけたたくさんのファンを観て、「オー・マイ・ゴッド!」と言うと、客席から「アイ・ラヴ・ユー」と声が聞こえ、「僕を愛してくれてるのは誰?」と挙手を求め、「35人くらい?65人かな?」とお茶目なリアクションを見せました。そして「約15年ぶりに日本の劇場にこうして来られてとても嬉しく思ってます。シネマライズで公開されたのは17年前だから、17年前ですね。(シネマライズは)なくなってしまって残念ですが、この作品が日本の皆さんの心に響くことを願っていますし、きっとそうなるんじゃないかと予感しています。エイリアンとパンク少年のあいだの初恋の物語だからね。今日はここにいる事がとても嬉しいんですが、この洋服で良いのかな?これスーツ?ハンカチーフ?キルト?…実はデザイナーはヴィヴィアン・ウエストウッドで、この作品にもとても縁がある方なんです。ニコール・キッドマンのキャラクターがかなりヴィヴィアン的だからです」と挨拶しつつ、しっかり気になる衣装についても紹介してくれました。
今回、ニール・ゲイマンの原作を映画化した経緯について聞かれると、「無理矢理やらされたんです」と最初はジョークを飛ばし、「実は以前仕事をしたことがあるプロデューサーが開発していた企画で、少しずつ何年もかけて僕を引っ張り込んでくれました。原作の短編は、ワンシーンしか描かれていない短い作品なんですが、それを何年もかけてより豊かな世界に広げていきました。キャラクターも増えました。パンク少年など自分らしいキャラクターにしたり、英国を舞台にすることで、どんどん作品を作っていきました」と答えました。次にニコール・キッドマン、エル・ファニングと仕事をした感想を聞かれると、「撮影中、ニコール・キッドマンの顔にパンクの方がつばを吐き続けるシーンがあり、彼女は全然楽しんでいませんでしたが、僕はそれを観てすごくパンクだなと思いました(笑)。これは以前一緒に仕事をしたニコールが、僕が誘うならやるわと言ってくれた作品です。『ラビット・ホール』で本当に良い形でお仕事をさせて頂いたのもあり、今回の役は彼女が通常演じるのとは随分違ったタイプで、ちょっと汚しを入れたり、意地悪で下品な言葉を使うような全然ニコールらしくない役を演じてもらいました。エル・ファニングは、一緒に仕事をしていて気持ちが良いし、プロフェッショナルだし、抜きん出た才能を持っている方です。今までお仕事をした、どの女優さんよりも一緒に仕事をしていて楽しい女優さんでした。この作品を観て頂ければわかると思うんですが、将来2人は親子役を演じるべきだと思います」と語りました。
ジョンの作品は、音楽も特徴的ということで「なぜ今回パンクを選んだのか?」と聞かれると、「『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』にもパンクはあったよ」とリアクションした後、「今の若い方って、親から手渡された世界がちょっと奇妙で、その世界に対して恐怖心があるんじゃないかと思うんです。セルフィとかInstagramで手一杯になってしまっているからだと思います。逆に上の世代はある種の怒りとかがきっかけになって行動している。それがちょっと右翼気味のパンク的な行動であり、だからこそドナルド・トランプ大統領が生まれ、ブレーキシフトが起きたんじゃないかと思います。それは非常に反移民的、反外国人、反ゲイな考え方を持つ人々であって、そんな世の中だからこそ僕等は若い方にパンク・スピリットを持って欲しいんです。なぜならパンクの精神はすごく健康的な反抗心だと思うんですね。ある意味すべてを綺麗にするような怒りを持って、愛を見つけて欲しいと願って作った作品です。こんな時代だからこそ、新しい形のパンクが必要じゃないかと思います。この状況を受け入れるのではなく、特に若い方にパンクの精神を持って欲しい。今は怖いという状況に麻痺したり、受け身になってしまっていると感じます。年を重ねた方の行動には、僕が全く賛同できないようなものもある。それは、すべてを隠していこう、自分も隠れていよう、すべて閉鎖的にしていこう、扉も国境も…という考え方。今改めて若さとは何かということを考え直したいと思います。とはいえ、この作品は政治的な映画ではありません。ラブストーリーで、クリエイティブでパンクなスピリットを思い出させてくれる、そんな作品であればと思っています。その時、パンクの意味は、抑圧する者、こういう体制を容認してしまうような考え方、さまざまなモノに問いかけていくものであり、多様な人々を受け入れていく、自分の人生においても、自分のクリエーションにおいても、という考え方にたどり着ければなと思います」と熱弁しました。
そして、この日は、ミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』で2007、2008、2009年にヘドウィグを演じ、ジョンとは2008年にジョイントライブで共演した、山本耕史が花束を持って駆けつけました。
久々の再会に盛り上がる2人の様子が仲の良さを表していましたが、ジョンと最初に会ったのは、山本が12歳の時だったそうです。2人は同じヘドウィグを演じた者同士ですが、ジョンは「ヘドウィグを演じたすべての方が、兄弟姉妹です。世界中でヘドウィグを演じた方々と会えば、目が合ったらわかるし、どれくらい大変かも共有できるんですよね。たぶん役者人生で一番きつい役どころだと思います。だからこそ、ヘドウィグを演じたあとは、他の役を恐れる必要がなくなります」と話しました。山本もこれには納得し、「これだけ1人で全部やる作品は他にないので、ジョンが今いくつかわからないけど(1963年生まれです)、すごいなと思いますね」とコメント。
山本は本作について、「青春時代を思い出して、すごく懐かしい部分もあれば、近未来的な要素もあります。僕はファンタジーが好きで、ジョンが直接的にファンタジーを描いたのは今回が初めてだと思うので、ジョンの心の中が形になって、前に出た感じがして楽しかったです」と感想を述べました。これに対してジョンは「小さい頃からファンタジーとコミックブック、SFが大好きだったんですね。今回初めてラブストーリーとそれを融合することができたんです」と返しました。この日は、2人ともヴィヴィアン・ウエストウッドの衣装を着ていましたが、劇中のファッションについても話が及び、ジョンは「まずエイリアン達は、1970年代のフィーリングを持ったものにしています。今回の衣装デザイナーは、サンディ・パウエルさんですが、70年代のエイリアンに感じられるように、パンクの服装も同じコンセプトで作って頂きました。我々人間と同じように、エイリアンもまた70年代にノスタルジックに思いを馳せるからです」とユーモアを交えて解説してくれました。
次にフォトセッションを行い、終わろうとする頃、2人でコソコソしているな〜と思ったら、突如歌い始め、会場はウットリしたムードに。生歌が聴けて感激でした!
最後にジョンは「この映画を観てこういう風に感じて欲しいとは言いたくない。皆に自分が感じたいように観て頂きたいから」と語っていましたが、独創的で不思議なこの世界観は、頭よりも心で楽しんでください。
来日ジャパンプレミア:2017年10月19日取材 TEXT by Myson
『パーティで女の子に話しかけるには』
2017年12月1日より全国順次公開
公式サイト
© COLONY FILMS LIMITED 2016
トーキョー女子映画部での紹介記事
■映画批評&デート向き映画判定、キッズ&ティーン向き映画判定
■TJE Selection イイ男セレクション/アレックス・シャープ
ジョン・キャメロン・ミッチェルが思うパンクとは?『パーティで女の子に話しかけるには』来日 はコメントを受け付けていません